サカナクションの新作は、なぜ『sakanaction』なのか?


3月13日にリリースされるサカナクションのニューアルバム『sakanaction』を聴いた。
前作『DocumentaLy』が完成したあと、もう山口一郎は次のアルバムは『sakanaction』というタイトルにしたいということを言っていた。
僕は、それを聞いて漠然と「サカナクションはこれだ」ということを明確に打ち出した、外側に開いたポップなアルバムになるのではないかと想像した。
しかし、実際に完成したこの『sakanaction』は「サカナクションとは何か」を自分たちの中に明確に探り当てた、内側に開いたアルバムとなった。
ポップなアルバムとは言えないが、けして内側に閉じたアルバムではない。
聴いた人の中で時間をかけながら、どこまでもポップなアルバムに変えていける有機的な作品だと言っていいだろう。

“アルクアラウンド”というキラーチューンがありながら『kikUUiki』というアルバムを作り上げたサカナクション。
“アイデンティティ”というキラーチューンがありながら『DocumentaLy』というアルバムを作り上げたサカナクション。
この『sakanaction』というアルバムは、またもや少し違和感を伴った第一印象を僕らにもたらすアルバムだ。
しかし、その違和感がより強烈であるところにこのアルバムの破壊力がある。
このアルバムは、サカナクションが、音楽がどこから生まれてくるのかを誰よりもはっきりとわかっているバンドであることを物語っている。(古河)
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