タイトルだけ見ると『エリジウム』の姉妹作?と思われるかもしれないが、時をかける少女吸血鬼物語『ビザンチウム』も同じく20日(金)に公開されました。『狼の血族』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のニール・ジョーダン監督の20年振りの吸血鬼映画。ゾンビとともに不滅の人気を誇る吸血鬼ものだが、性差別問題という視点を持ち込んでいるのがユニーク。妖艶なのにとても清らかで、相変わらず独自の美意識に貫かれている。
ブラッド・ピット×トム・クルーズの『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』で、少女と母親的な女性(幼子を亡くして吸血鬼となった)が抱き合ったまま、同胞の吸血鬼たちから日光で焼かれて灰になるせつなすぎるシーンがあったが、彼女たちの復讐劇みたいだな、とも思えた。すると、ちょっと嬉しくなった。
それにしても16歳の吸血少女を演じたシアーシャ・ローナン(『ラブリーボーン』『ハンナ』)が、ラファエロの中世絵画のようで美しい! アカデミー助演女優賞にノミネートされた『つぐない』の可憐な姿をもう一度観たくなった。でもって、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズがもうかっこよすぎ! ブラピやトム・クルーズの血色のいい吸血鬼陣よりはるかにヴァンパイアが似合うよれよれの風体に、ああ、もう早く吸血鬼になって!とやきもきしながら見入ってしまうのは私だけではないはず。
ちなみに、吸血鬼ものとしては12月公開のジム・ジャームッシュの新作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ)も楽しみ。そういえばトム・ヒドルストンは、ギレルモ・デル・トロ監督の新作『クリムゾン・ピーク(原題)』で降板したカンバーバッチに変わって出演するそうだ。
そして、昨年観たコッポラの自主制作作品『Virginia/ヴァージニア』のエル・ファニングの神がかった美しさはやっぱり忘れらない……。秋の夜長に最適のゴシックホラー、未見の方はDVDでぜひ!(井上)