脱線

脱線

謝りに来られて、自慢されたことがある。


10年くらい前の話です。
某バンドに、インタビューを申し込んだら、断られた。
レコード会社の人が、いろいろ言い訳していたが、
「スケジュールが全然ありません」とか、
「おたくの雑誌、嫌いだから出ません」とか、
そういうわかりやすい理由ではなくて、
なんか、話をきいても腑に落ちなかった。

今考えると、本当は単に「原稿チェックのない
雑誌に出るのはイヤ」とか、そんなことだったのではないかと思う。


そんなわけで、インタビューできなくて、「なんだよお」とかは思ったけど、
まあ、「取材はオファーされたら受けなければならない」って法律が
あるわけでもないし、正直、「この記事がないと誌面的に大打撃だ!」
というものでもなかったので、あきらめた。

そしたら後日、そのバンドが当時所属していた事務所の社長から、
電話がかかってきた。
僕とは当時、ぎりぎり面識があったかなかったかぐらいの、
そんな濃くない関係の方。
お詫びをしたいので、うかがいたい、ということだった。

いや、そんな。謝られるようなことでもないし。
と言ったんだけど、結局、来社された。

で、最初は
「いや、申し訳ないです、メディアとの付き合い方を
まだちゃんとわかっていないところがあって――」
「いやいや、そんな」
みたいな会話から始まったんですが。

30分後、続く社長の話をきいていて、ふと我に返った。

あれ? 俺、自慢されてる。

その、お詫びから入った社長のトークは、最近契約したばかりだという、
そのバンドとその事務所との出会いの話になり、そこから、その事務所を
支えている某大物バンドの話に移った。
で、そもそもは、その某大物バンドがデビューの時に「マネージメント
してください」って頼んできたのがきっかけで、その事務所が始まった、
という話になり、そのバンドはみるみる大きくなって、
ここでこんなヒットを飛ばし、このタイミングでこんな歴史的成功を収め、
それに伴って事務所もどんどん発展し――

みたいな、某大物バンドとその事務所の、立身出世物語を、
僕はきかされていたのだった。
要は自慢話です。

でも、不思議と腹が立たなかったのを覚えている。
「謝りに来られて自慢話をきかされている俺」という、
その図のマヌケさがなんか面白くて、笑えたからだと思う。

以上、「話が脱線する」一例でした。
「話が脱線する」って、基本的にはいいことではないですが、
その「話が脱線するさま」が一流の芸になっているのが、
たとえば、ライブにおける石野卓球のMCだと思う。
もう、「脱線」じゃなくて「分裂」とか「増殖」に近い面白さです。


写真は、12月16日に3タイトルまとめてリリースされる、電気グルーヴの
リイシューDVD作品。

左から、

「ミノタウロス+ケンタウロス+シミズケンタウロスDVD」
「野球ディスコDVD」
「ノモビデオDVD」

です。
SIGHTの入稿が終わったらまとめて観るぞ! 観倒すぞ!
というのが、今から楽しみです。



PS.一応書いておきますが、前述の事務所・バンドと
電気グルーヴは、関係ありません。
そして、このDVD3枚に、卓球のMCがいっぱい入っているわけでも
ありません。
むしろ、ライブ映像はどれも、あんまり(あるいはまったく)
しゃべってない時期のだと思う。
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする