映画「モテキ」を観ました

映画「モテキ」を観ました

って、まだ観てなかったのか? 
特集コーナーでインタヴューとかしといて。

という話ですが、実は、最終的な完成品としての
映画「モテキ」は、私、まだ、観ていなかったのでした。

映画のパンフとプレス(宣伝資料)の原稿の依頼をいただいて、
それ、試写が始まるのを待っていると間に合わないスケジュールだったので、
先にこそっとDVDを焼いてもらって観たのですが、観終わった時に、
「これ、試写に行くの、やめよう。次はちゃんと、
公開されてから劇場で観よう」と、決めたのでした。
で、僕が観たそのDVDからあと、編集、だいぶ変わったらしい。

というのもあって、楽しみにしていましたが、公開日の23日は私、
京都音博だったし、24・25日も絶対混むだろうな、と思ったので、
平日の昼間を狙おう、と、昨日、有休をとって、観てきたのでした。

まず、着いてびっくり。場所が渋谷とはいえ、平日昼の13:30
からの回なのに、客席、8割がた埋まっている。
女の子同士も、カップルもいるし、男同士のグループもいるし、
男ひとりも、周囲から浮かない程度の人数、いる。
平日のこの時間のせいか、全体に若いが(大学生ぐらいが中心)、
年配のお客さんもいる。
70代のおじいさんがひとりで観に来ていたのには、驚いた。
思わず大根監督に「おじいさんがひとりで来てる!」とメールしたら、
「ああ、なんかおじいさんウケいいみたい。週刊文春の小林信彦の
連載でも誉められた」という返事がきました。

で。観た。
びっくりした!
何、あのエンドロール!
俺観た時、あんなのなかった! 
普通に「藤本幸世とスチャダラパー」のライヴ映像で終わってた。
って、考えたらそれも全っ然普通じゃないんだけど、
それが普通に思えてしまうくらいのインパクトでした。
すげー。

で、そのほかにも、ちょこちょこと変わっていましたが、それがすべて
「正解!」の方向に、働いていました。

とにかくもう、2回観てもおもしろかった。
というか、この映画を観た私の友人知人など、今んとこみんな、
驚くほど第一声が同じです、そういえば。
みんな必ず、観終わった瞬間に、
「もう1回観たい」
と言うのです。
つまり、そういう映画だってことです。

ただし、私、RO69の特集で大根監督のインタヴューをしたり、
ここでおもしろいおもしろいとか書いているわりには、
「どこがどのようにどうおもしろいのか」みたいな、
いわゆる映画評っぽいことは、まだ書いていません。

正直、なんか、書きたくないのです。
書けないわけではない。むしろいくらでも書ける。
事実、最初に観終わった時、あまりにもおもしろくて、
そしてあまりにも「わかりすぎて」、興奮のあまり、

「あそこでみゆきのあのセリフが出ることによって、
一気に『ああ、そういうことか』ってわかるのが、何かというと~」

とか、

「あそこでるみ子が吉野家の牛丼を食うのはなんでかというと~」

みたいな、こと細かい解説を、大根監督本人に次々とメールで送りつける、
という、今思うと「大丈夫か俺」「ストーカーじゃねえか」と、
自分で自分が心配になるような行為を、つい、してしまったほどです。

ただ、それ、まだ観てない人が読んで、はたしてどうなの?
というのがあるのです。
知らずに観たほうがおもしろいんじゃないか、観る前のそういう解析って
じゃまなんじゃないか、と思うのです。
白紙の状態で観て、「ああっ、これってこういうことじゃん!」とか、
「そうそう、そうなんだよねえ」ってわかる過程そのものが、
すんごい楽しい映画なので。

なので、公開が終わったら、どっかになんか書こうかなあと。


でも、ちょっとぐらいは書きたいので、ひとつだけ。

たとえば。小説とか映画とかマンガとかで、
「ああ、この人、知らないんだ」っていう、サムい作品、ありますよね。

たとえば。あれなんだっけ、誰のなんていう小説だったか
忘れてしまったけど、何年か前に読んだ警察小説で、
道を踏み外した高校生の女の子の足取りを刑事が追う、
みたいな話があったのですね。
ミステリとしてはすごくおもしろい本だったんだけど、
その、女の子の足取りを追う過程で、渋谷のクラブに、
刑事がききこみに行くシーンがあったんですが。

その、トランスががんがんかかっているクラブに行く、
超満員である、そこで客に女の子の写真を見せて
「ああ、知ってる、でも最近見ないなあ」なんて
情報を得る、という。
で、そういうのを読むと、

・渋谷には、平日の深夜に超満員になってるようなクラブ、ありません。

・同じく渋谷には、もう10年以上前から、夜中に高校生が
入れるようなクラブ、ないです。
どこもIDチェック、厳重です。警察がうるさいから。

という時点で、こう、気持ちがさめてしまうわけです。
物語に入り込めなくなってしまう、というか。

何が言いたいのかというと、つまり、もう、超細かいディティールまでが、
すべて、そういうサムさとは180度反対にある作品。
作り手が、「自分自身が身体でよおく知っていること」
だけで(だけを)描いている、そんな映画が「モテキ」である。
という話です。

という意味では、昨日、渋谷の映画館に大学生が詰めかけていたの、
結構不思議だ。
「モテキ」のそういうディティールのリアルさって、どっちかというと、
20代よりも、30代と40代のサブカル中年にとって、
「ああっ、そうそう!」って刺さるもんだと、僕は思っていたので。
単に、久保ミツロウ先生が30代、大根監督が40代だから、だと思いますが。

ただ、サブカル中年しか観に来ない映画と、大学生も観に来る映画、
どっちがいいかというと、言うまでもなく後者なので、すばらしいことだと思います。


あともういっこだけ。
リキッドルームの楽屋で、幸世がピエール瀧さんにあいさつするシーンで、
「ファンです! ナゴムのソノシートから持っていて」みたいなことを言うんだけど、
あれ観て、「てめえ31のくせに! 後追いじゃねえか! 
俺はリアルタイムで知ってるぞ! 人生のライヴ観たことあるぞ、 
京都BIGBANGで!」と、いばりちらしたくなりました。
なんなんでしょう、私は。

というふうに、「モテキ」について書き始めると、際限なくいつまでも
いつまでも書いてしまうので自粛している、というのもあります。
詳しくはまたいずれ。
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