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    なぜ奥田民生は子供ばんどに多大な影響を受けたのか

    なぜ奥田民生は子供ばんどに多大な影響を受けたのか

    ということを、改めてちゃんと書いたほうがいいかなあ、と、
    だんだん思えてきました。

    私がそう思うようになったの、昨日ライブレポをアップした、
    寺岡呼人プレゼンツ・ユニコーンとジュンスカと子供ばんどが出演
    (あとOverTheDogsとOKAMOTO'Sも)の
    「Golden Circle」が、きっかけなわけですが。

    あのイベント、なんでジュンスカとユニコーンなのか、ということに
    対しては、誰も疑問を持っていなかったし、そこに若いオープニング・
    アクトがつく、というのも大丈夫だけど、ただ、子供ばんどの位置づけが、
    ちょっと、よくわからない人も多かったろうなあと。

    ジュンスカとユニコーンが、特に純太とOTが、大変に尊敬している。
    ということは、特にOTは前々から公言してきたので、知識としては、
    ファンのみなさんもご存知だとは思うが、そのファンのみなさん、
    子供ばんどのライヴを観て、「うわあ、確かにOTの音楽、
    ここからの影響でっかいわあ」ってことが、パッとわかるような
    感じではなかったんじゃないかなあ。と、思うのです。
    あと、ジュンスカとユニコーンをリアルタイムで知ってる人で、
    子供ばんども通っている人は、少ないと思う。
    子供ばんど、ユニコーンがデビューした翌年・ジュンスカが
    デビューした年に、活動休止したので。
    ちょっと上なのです、世代的に。

    で、純太がどういうふうに影響を受けてきたのかは、私、
    詳しくは知らないんですが、OTには昔インタヴューで
    きいたことがあるし、当時の時代背景とかもわかるので、
    ある程度は解説できるかなあと。
    なので書いてみます。私の推測も、入っていますが。

    OTが高校生~専門学校生で、バンドを本気でやり始めた頃、
    つまり1980年代の前半から中盤にかけての時代ですが、
    日本のバンド小僧たちの間には、へヴィメタ/ハードロックの
    大ブームが、吹き荒れていました。
    OTもその渦中にいました。
    が、ヘヴィーでハードな音は好きなんだけど、このブームって、
    なんか、自分的には「ちょっと違うなあ」っていうとこがある。
    と、感じていたのではないかと。

    その、違うところ。

    ・長髪、金髪、鋲を打った革ジャンや革パン、ロンドンブーツ。

    ・歌詞のヒアリングが不可能なキンキンのハイトーン・ボイスで、
    「悪魔」とか「炎」とか「宇宙」とかが頻出する歌を歌う。

    ・ステージ上では、怖い顔か陶酔顔、どっちか。
    特にギタリスト。目を閉じて己の技に耽溺しながら、ものすごい速弾きを繰り出す。
    笑顔、なし。

    というあたりが、OT的には、「なんかなあ」と。
    まあ長髪はいいけど、鋲打ち革ジャンとかじゃなくて、
    もっと普通のポップな格好がしたいし、歌詞は普通に
    自分の日常に根ざしたことを歌いたいしなあ。という。

    じゃあ、エアロスミスとかガンズ&ローゼズとかモトリー・
    クルーとかみたいな、アメリカ方向の人たちは
    どうなんだ、というと、こう、ハーレー転がして、酒飲んで、
    ドラッグ食って、一晩で何人もの女をとっかえひっかえする
    ロックンロール・ワイルドライフ、みたいな感じなわけで。
    それも、自分にはリアルじゃないよなあ、と。

    そうです。つまり、そういう、自分の日常にとって普通じゃない
    要素がゼロな状態で、ハードなロックをやっている、当時、ほぼ唯一の人たち。
    それが、OTにとっての子供ばんどだったのではないか、と思うのです。
    要は、子供ばんどは、もっと自然で、もっと自由だったわけです。
    であるがゆえに、そのメタルブームにのっかれなかった、とも言えるわけで、
    よってそのあと、なかなかに険しい道を歩んでいくことにもなるわけですが。

    あと、客席を走り回るとか、ヘルメットかぶってそのてっぺんに
    ミニアンプとか、「かっこいい」じゃなくて「おもしろい」とか
    「華やか」を目指した衣装やアクションとか、
    そういう、「楽しきゃ何やってもいいじゃん、二の線ってつまんないじゃん、
    シリアスな顔してることないじゃん」みたいな精神性も、当時のOTにとって、
    シンパシーを感じた重要なポイントだったんじゃないか、とも思います。


    「みんなは怖い顔して演奏してて、たまに『ニヤッ』って笑う程度だったけど、
    そんな中、うじきさんは、ギター弾きながら爆笑してたわけよ。
    ああ、自由でいいなあ、ってすごい思って」

    昔、インタヴューした時、OTがそう言っていたのを憶えています。

    って考えていくと、OTが初めてボーカリストとして参加したバンド=
    ユニコーンの前にやっていたREADY、最初は子供ばんどとアースシェイカーの
    コピーから初めて、だんだんオリジナルを増やしていった
    バンドだったんですが、なんで子供ばんど以外はアースシェイカー
    だったのかも、わかります。
    アースシェイカーは、そのメタル・ブームから出てきたバンドであり、
    子供ばんどと比べるとそっち寄りだったけど、逆にそのメタル・シーンの中では、
    悪魔とかじゃなく普通のことを普通に歌う、「こっち寄り」なバンドだったので。

    あ、あと、子供ばんど、速弾きがあんまりない、というのも、大事だったかもしれません、
    OT、確か当時、速弾きあんまり得意じゃなかったので。
    今もか。

    上は、11月11日にリリースされるボックスセット
    『子供ばんど大百科 1980-1988』。
    30,000円+税。と知って、「たっかあ!」と一瞬思ったが、
    過去12枚のアルバム、全部入っているそうです。
    1枚2,500円か。あとDVDと豪華ブックレット付き。なるほど。
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