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    sumikaのツアーファイナル、大阪城ホールでのライブを観て

    sumikaのツアーファイナル、大阪城ホールでのライブを観て
    正直なおとなでありたいと、片岡はMCで言っていて、sumikaはまさにその通りのバンドになったんだなとあらためて思った。
    コミュニティへの愛情や一緒に過ごす時間への感謝をたくさんの歌にしてきたsumikaだが、もちろん彼らの音楽に込められたメッセージはそれだけじゃない。
    まっすぐで温かみのあるメッセージと同じくらい、皮肉もあるし、捻くれたところもある。
    だが、皮肉や捻くれた観点を歌うときにも、ちゃんとマナーがあるというか、勢いに任せて衝動的にぶちまけるようなやり方は、彼らは絶対に選ばない。
    そういう曲こそ、一級のポップソングに仕上げて、一曲まるごと楽しめるエンターテインメントとして届けるのだ。
    それはとても正直だし、誠実なスタンスだなと思う。

    イントロの瞬間大きな歓声を呼ぶ楽曲はたくさんあって、でもそういった代表曲のカラーは見事に色々だったりする。
    それがsumikaの凄さだと思う。
    ただ肯定的で前向きなことだけを歌って共感を呼ぶのではなく、喜怒哀楽すべてを歌い、しかしその歌を届けるその純度において聴き手への深い信頼を伝える。
    そのやり方は実はとても難しい。
    強い信念といかなる方向性の曲でもしっかりと聴かせる器量がなくてはいけない。
    sumikaにはそれが揃っている。

    そんな彼らだけのスタンスと戦い方が見事に整ったツアーだった。
    今日は特に自分たちの姿勢への確信と自信が溢れる、フォーカスの絞れた素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。
    現代のポジティビティは、こんな風に、「嘘はつかない」「希望も疑いもすべてを伝えるその伝え方において誠実を貫く」という姿勢に宿るのだと思う。
    その強い考え方が、彼らの眩しいポップソングを生み出す最大の素晴らしさなのだ。

    メンバーがじゃれ合う姿は最高に微笑ましい。
    それは向いている方向がまったくブレないバンドだけの、まったくブレない目的を共有している瞬間の特権だと思う。
    とてもよかった。集大成のようなライブだった。(小栁大輔)
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