少年キッズボウイの1stアルバム『少年キッズボウイ 1』で、私たちは時空も国境も越えた旅に出る

少年キッズボウイの1stアルバム『少年キッズボウイ 1』で、私たちは時空も国境も越えた旅に出る
2020年結成、全員ガッツリ社会人という異色のバンド、少年キッズボウイが待望の1stアルバム『少年キッズボウイ 1』をリリースした!

ファーストアルバムは多くのアーティストにとって「名刺代わり」と言うが、少年キッズボウイの場合は、1曲1曲、年代もジャンルも縦横無尽に飛び回っていて、聴けば聴くほどどんなバンドなのかわからなくなるし、バンドの底が見えない。一聴するとにぎやかでキャッチーな曲が多い印象だが、歌詞がヘビーだったり、明るさの中に切なさがあったり、一筋縄ではいかない曲ばかりだ。

繰り返されるフレーズが気持ちいいダンスチューン“最終兵器ディスコ”、過去の名曲や名作映画へのリスペクトがタイトルや歌詞に溢れるロックナンバー“なんてったっけタイトル”、現実への諦念感や自らへの不甲斐なさをポエトリーリーディングで奏でる叫びのような歌 “イン・ザ・シティ”、パリの街角を散歩しているような夢見心地なサウンドに、「中野」という生活感が不思議とマッチする、中野のビアバー「麦酒大学」のタイアップ曲“中野シャンゼリゼ -麦酒大学のテーマ-”、トランペットの音色が心地好いポップなサウンドで平和を願う“ぼくらのラプソディー”、そしてCD限定で入るボーナストラック“この街のすべて”……全7曲とは思えないほど、いろいろな時代のいろいろな国の音楽を巡ったような充足感に包まれる。

中でもやはり1曲目の“君が生きる理由”が抜群にいい。少々重めのタイトルからは想像できない、イントロからして誰しも思わず身体が動くようなビートに、「君」を想うまっすぐな歌詞が乗るのが少年キッズボウイらしい。

印象的だったのは、2番のサビ前に入るセミの声。セミの声なんて毎年うんざりするほど聞いているが、この曲の中で耳にすると、今年の夏に自宅マンションの外から聞こえたセミの声ではなく、小学生のとき、夏休みのまっ昼間、実家で畳に寝転がって聞いたセミの声がなぜか浮かぶ。

からの《明日なんていらねーよ。/この夜は永遠だから》というパンチラインで一気に現実に引き戻されるのだが、あの一瞬のタイムスリップで、「生きる理由」なんて考えたこともなかった幼少期から1日1日積み上げてきたこのなんでもない日常が、そしてこの日常を支えてくれる人が、私の生きる理由なのかもなあとふと思ったりした。

この曲はほとんど全編、女性ボーカルのアキラが歌っているのだが、最後の最後《君が生きるそれだけで/僕が生きる理由になるんだよ》というリリックだけは男性ボーカルのこーしくんが歌う。それによってより一層このメッセージが印象深く心にのこる。私はだれかの生きる理由になっている。そう思うだけで、いつもの日々がなんだか煌めいて愛しく感じた。

底が見えない(底があるのか?)少年キッズボウイ、今後のリリースもとても楽しみ。(藤澤香菜)


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