《君には僕がいる》じゃなく《僕には僕がいる》――anoの新曲“涙くん、今日もおはようっ”はすべての人の孤独をポップに照らす応援歌だ


anoの新曲“涙くん、今日もおはようっ”。まず、神聖かまってちゃんの子あのちゃんが一緒に曲を作っている、というだけで泣けてくる。


根っこの部分でつながった10年来の「戦友」であるふたりが今ふたたび音楽でつながり、力強いメッセージを発信するということ。そしてそれをテレビのCMソングや『Mステ』『CDTV』のような歌番組で全国的に届けるということ。

生きづらさを抱えながら日々を生きるすべての学生に向けて(もちろんかつて学生だった私たち大人も含む)、「あの」と「の子」、ふたりの光が降り注ぐような希望の応援歌がこの2023年に誕生したことが心から嬉しい。

マクドナルドとのタイアップソング“スマイルあげない”がそうであったように、“涙くん、今日もおはようっ”にもあのの学生時代の苦々しい実体験がベースに刻まれているけれど、仕上がりはどこまでもキャッチー。軽快なシンセとアコギのポップなサウンドに乗せて歌われるのは《他人とは分かり合えない/それでも僕には僕がいる》というメッセージだ。


決して《君には僕がいる》ではないし《僕には君がいる》でもない。《他人とは分かり合えない》という言葉は残酷に響くかもしれないけれど、そのゼロ地点に立って初めて見える景色があり、そこから歩ける道がある。そんな孤独な僕らに《音楽なんて1人じゃ聴けないというならとなりにいてあげるから/となりで歌ってみせるから》と言ってくれるどこまでも優しいアーティストがanoなのだ。

ライブでは既にアンセムになっているこの曲。間奏でanoと一緒にヘドバンし、アウトロで大黒摩季ばりの《ららら》(本人曰く)を一緒に歌っている瞬間はひとりじゃない気がするし、それは手軽な連帯や安易な共感ではなく、《僕には僕がいる》と確かに思える尊い瞬間なのだ。(畑雄介)


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