原点回帰とは無縁の音がそこにはあった。ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2023 「サーフ ブンガク カマクラ」立川公演で最新バージョンのアジカンを観た!

原点回帰とは無縁の音がそこにはあった。ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2023 「サーフ ブンガク カマクラ」立川公演で最新バージョンのアジカンを観た!
入場すると、ステージ向かって左手には真っ白なコテージとビンテージカー、右手にはヤシの木とサーフボード。そして奥には江ノ島が見える。視覚から『サーフ ブンガク カマクラ』を楽しめるセットに、始まる前から心が躍ったのは言うまでもない。

お揃いのストライプシャツとチノパンを着て登場した4人は、セットや衣装の雰囲気もあってかリラックスした様子で、しかしひとたび演奏が始まれば静かに燃え上がるような熱を発する。客席もそれに呼応するように、拳を掲げたり、身体を揺らしたり、オリジナルのダンスを踊ったりと思い思いのやり方で音に身を委ねる。のっけから会場全体を包む熱の高さに、やはりこの作品はアジカンにとってもファンにとっても特別なものなのだと実感した。

ただ昨日鳴っていた音は、15年前を彷彿とさせる原点回帰の音ではなかった。「これぞアジカン!」と言えるパワーポップなサウンドはビシビシと感じながらも、4人の奏でる音から、後藤の歌声から、発する言葉や佇まいから、より一層強くて優しくて、とてつもなく温かいオーラのようなものを感じた。そこに4人がいるだけで励まされるような、ここにいる一人ひとりの今日までの道のりを肯定してくれているようなパワーがあった。

ROCKIN’ON JAPAN8月号の取材で、後藤は『サーフ ブンガク カマクラ』を「アジカンにとってのターニングポイント」と語ったが、そんな重要な過去作に真っ向から対峙したからこそ見える新しい景色があるのだなと思わせる、最新バージョンのASIAN KUNG-FU GENERATIONがそこにはいた。

ライブ冒頭で、後藤は客席に向かって「誰の真似もしなくていいから、自分の楽しみ方で楽しんでください」と言った。このモードが、今のアジカンを表す言葉なのかもしれない。アジカンらしく突き進み、最新バージョンをどんどん更新していく4人は今がいちばんかっこいい。(藤澤香菜)


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