7月からSAKANAMONは、「PLUS ONE」をテーマにゲストアーティストを迎えた配信シングル三部作をリリースしてきた。第1弾は田辺由明(マカロニえんぴつ)を迎え、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドに提供した“光の中へ”のセルフカバーでアニメファンにも広く波及し、第2弾ではmeiyoをゲストボーカルに迎えた中毒性のある複雑な掛け合いのメロディがインパクトを残した。どちらも彼らにとって大きなチャレンジだったが、独特な言葉選びのセンスが光るSAKANAMONらしい曲とも言えた。
ところが、今月リリースされた第3弾となる“猫の尻尾 feat. 蒼山幸子”にはとても驚かされた。歌詞が格段にシンプルなのだ。このSAKANAMON初の失恋ソングは、別れることはもう覆せないのはわかっているのに、つい引き止めようとしてしまう情けない姿が少ない言葉でありありと描かれている。歌詞の中のふたりがどういう歴史を辿ってきたのか、なぜ別れを選ぶことになったのかは読み取れないけれど、《痛い程》に悲痛な想いがはっきりと伝わってくる。そして、蒼山の繊細なコーラスと表現力豊かなピアノの音色によって、曲が進むにつれて切なさがより増幅されていく。
一癖あるのがSAKANAMON、だけどこんなにもシンプルな表現で、リスナーを胸が締め付けられるような想いにさせてしまうところに表現の底力を感じたし、3部作の中でいちばんの衝撃を受けた。“猫の尻尾”を聴くと、あなたが抱いていたSAKANAMONのイメージが変わるかも。(有本早季)
『ROCKIN'ON JAPAN』1月号のご予約はこちら
SAKANAMON初の失恋ソング“猫の尻尾 feat. 蒼山幸子”は、今までにないほどシンプルで表現力が際立つ名曲
2023.11.25 12:00