クジラ夜の街が、Zepp Shinjukuでツアーファイナルを迎えた。アンコール含め2時間半のパフォーマンスの中では、これは同じバンドのステージなのかと翻弄されるほどにいろんなクジラ夜の街の姿を見ることができた。
王道のロックチューン、ダンサブルなナンバー、ジャジーな雰囲気漂うバンドアンサンブル、どんな曲調にも全力でレスポンスする観客の一体感というライブバンドとしての強みも見せつけながら、今ツアーで挑戦したメンバーによる朗読パートでは流れを一変させ、会場を幻想的な空気で包み込んだ。
ライブの盛り上がりや一体感が売りのバンドも、朗読や幻想的な演出を取り入れるアーティストもいるけれど、そのどちらもひとつのライブの中でシームレスにやり遂げてしまうクジラ夜の街はやはり唯一無二のバンドだ。
そして、ライブ終盤で宮崎一晴(Vo・G)が口にした「ファンタジーを創る“ロックバンド”」というフレーズがまさにその特異性を表していた。
現実逃避をするためにファンタジーを描いているわけではなく、頑張りすぎなくていいんだよと現実に寄り添い肯定するために、そんな音楽を創っているのだというスタンスにクジラ夜の街のロックバンドらしさをひしひしと感じた。
ライブのアンコールでは、結成7周年を迎える6月21日(金)にLINE CUBE SHIBUYAで初のホールワンマンの開催を発表した。ライブハウスですら会場を自分たちの色に染めていた彼らだから、ホールではよりその世界観が色濃く表現されるに違いない(演出セットにも力を入れたいとMCでメンバーも意気込んでいた)。次はどんなファンタジーの世界と優しい歌を届けてくれるのか楽しみだ。(有本早季)
『ROCKIN'ON JAPAN』5月号のご購入はこちら
ファンタジーを創り、現実を肯定する──クジラ夜の街のハイブリッドなライブを観て
2024.04.08 19:30