『かぐや姫』をモチーフに、《僕の全盛期を/あんたとの日々で/終わらせないよ》というあまりにもリアルでヒリつくような言葉に心がささくれ立つ"輝夜姫”をはじめとして、クジラ夜の街のメジャー1stアルバム『月で読む絵本』は「ファンタジーを創るバンド」が秘める根源的欲求を極限まで具現化したような1枚となった。
その根源的欲求とはつまり、「ファンタジーを創る」=「物語る」ことである。ソングライターである宮崎一晴(Vo・G)が感じたリアルをファンタジーに落とし込む形で物語ることもあれば、バンドが直面する現実や、今を生きる人々の心を代弁したり。
絵と文字でファンタジーを届ける代表的なコンテンツ「絵本」をテーマに持ってきた着眼点もさることながら、言わば「語り部」として、彼らはファンタジーを歌と音に乗せることで人々に夢を、はたまた現実を知らしめてきたのだ。
彼らが生み出した音楽は、音を聴くだけではなく、歌詞を読むだけではなく、その「世界」に浸ることで最もその効能を発揮する。
"輝夜姫”について宮崎は、「『命のやりとり』というところに真剣に向き合ってみたかった」とこのテーマに挑んだ理由を振り返り、『銀河鉄道の夜』がモチーフになった"Memory”では、宇宙を感じさせるサウンドアプローチでありながら「嘘のない音にしたかった」と力強く語ってくれた。
やはり、クジラ夜の街が創り出すファンタジーにはいつだって「真実」があり、歌にも音にも、どうしようもないくらいに「リアル」が溶け込んでいる。
インタビューでは、「もっともっと自由な冒険がしたい」とバンドの展望についても語ってくれています。この特集を掲載している『ROCKIN'ON JAPAN』1月号の発売は12月27日(水)まで。ぜひそれまでに誌面で確かめてください。(橋本創)
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クジラ夜の街のメジャー1stアルバム『月で読む絵本』は聴くでも読むでもなく「浸る」もの――最新インタビューで迫るバンドの今
2023.12.22 17:00