なきごとが「音楽の力」を証明したZepp Shinjukuでのツアーファイナルを観た

なきごとが「音楽の力」を証明したZepp Shinjukuでのツアーファイナルを観た
ライブハウスを主戦場に自分たちの音楽を広めていこうと頑張る若手バンドに、コロナ禍が与えた影響というのは想像以上に大きい。それはライブの開催ができなかったり制限がかかったりという物理的な要素もあるけど、人が生きていくうえで「音楽」という存在は不要不急で、二の次三の次だという社会からのメッセージを、活動初期の段階でダイレクトに受け取らざるを得なかった精神的ダメージも相当大きかったはずだ。

約5年半の活動のうち、半分以上の期間にわたって制限を余儀なくされたにもかかわらず、それでも音楽が持つ力を信じ続けてきたのがなきごとだ。
「自分は音楽を聴く側の人間でもあって、何度も音楽に力をもらってきたから、音楽の力を信じているし、なきごとの音楽もそうでありたい」と水上えみり(Vo・G)が口にしていた。この先も、災害や感染症で社会が危機的状況に陥ったら、きっと音楽はまた同じような扱いを受けるだろう。それでも、誰になんと言われようとも、自分たちはその力を信じ続けていたいという強い想いが、初のZepp Shinjukuでのツアーファイナルを実現させたのだ。

8thシングル『素直になれたら』の曲たちを引っ提げた今回のリリースツアー。この作品ではいつも以上にストレートに心の機微が描き出されている。
リリース時のJAPANのインタビューで、“生活”のような踏み込んだ歌詞が書けるようになった理由について、「生きるとか死ぬとかの曲って、聴く人を傷つけるような曲にもなりかねないので、自分も覚悟を決めて書かなきゃ」と水上が語ってくれていたが、それも音楽の力をより強く実感できるようになった自信からきているんだろうなと、溢れる感情を音楽にぶつける熱いライブを観て合点がいった。
Zepp Shinjukuの大きなビジョンを背負って、負の感情がだだ漏れになったまま鳴らされた“生活”は、音楽の力を信じ、傷つけることを恐れずにやり切った圧巻のパフォーマンスだった。

ライブ本編終了後には、7月に2ndフルアルバムのリリースと、今ツアーでは回れなかった土地にも赴く全15ヶ所の新たなロングツアーも発表された。
次の作品ではどんな感情を私たちにあらわにしてくれるのか、夏がとても待ち遠しい。(有本早季)


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