RADWIMPS新曲”カイコ”を聴いて、考えたこと


今年も3月11日にRADWIMPSから新曲が届いた。
2年前は”白日”、去年は”ブリキ”、そして今年は”カイコ”。

あの震災から丸3年が経って明らかになったのは、元通りになったものなど、いまだにひとつもないということだけだ。それでも、あらゆる理不尽と正面から向き合う人だけが、少しずつ世界を回復させているのだと思う。できれば自分も、そういう人間でありたい。

”カイコ”の歌詞は、自分の耳で聴きとった限り、「世界は疲れたって」「あとはもう壊れるだけ」というようなことを繰り返し歌っている。ピアノの調べから、バンドのアンサンブルへと曲が展開しながら、宇宙レベルで俯瞰したこの人間世界の混乱ぶりを丁寧に描き出していく。

ここには「頑張れ」も「大丈夫だよ」もないのに、メロディと言葉がどんどん肉体に染みこんで、それを軽くしてくれるように思えるのは、誰もが今の世界がグチャグチャでクタクタに疲れていることを感じているからだ。そのことを、こういう美しさのロックとして描き出して共有できるのがRADWIMPSだ。

曲の冒頭、ノイズのように入っているヴォーカルを逆再生すると、世界が回復していくことへのバンドなりのメッセージに繋がるらしい。その事実にたった1日で多くのリスナーが気づいて、ネット上で手がかりが共有されていく繋がりが素晴らしいと思った。

ところで「カイコ」とはなんだろう。

人間という巨大な存在に飼われて、桑の葉っぱを食べては絹糸を吐き出し、絶対に野生では生きていけないことを運命づけられた小さな虫のことだろうか。
それとも「回顧」や「懐古」という言葉から、振り返るべき過去と現在が本当は常にひとつであることを仄めかすための身振りだろうか。

自分にはまだ結論はない。でも、それをバンドのメンバーや聴き手のひとりひとりと、心ゆくまで語り合ってみたいと思った。(松村)
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