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    よもやまリバティ―ンズ。

    よもやまリバティ―ンズ。

    私が初めてリバティ―ンズを観たのは2002年の5月。
    ロンドンから電車で2時間くらいの小さな街まで観に行ったのだった。

    まだデビューシングルを出したばかりでロンドン以外では人気もなく、当日券で余裕で入れた。
    というか、ベニューの外でピートとカールが開演前にだらだらたむろしていて、「おー日本人?」
    「東京からきたの?」
    「だったら金とかいいから観てってよ」
    ということで、タダで入れてくれたのだ。

    肝心のライヴは僅か20分。
    いきなりカールがギターネックでピートの後頭部をぶん殴り、
    怒ったピートはカールに飛び蹴りをお見舞いし、
    何がなんだか分からないまま二人は胸ぐらド突き合いながら退場。
    したら客電がぱっと付いてああ…おしまいか…みたいな。

    呆然としてたら、フロアに降りてきたピートに「酒おごってよー」と声をかけられた。
    入れてくれたお礼にエールをおごったまではよかったのだけど、
    気付いた頃には「これって確実にチケット代以上おごらされてますよね…?」状態だった。
    というか、そこにいたファンは皆しこたま彼らにおごらされていた。

    帰り際、「今日はありがとねー記念にこれ」と言って、
    ピートがノートの切れ端に書いた全然似てないカールの似顔絵をくれた。
    「超似てるじゃん!」と横でカールは笑っていたけど。
    ピートな絵やら詩やらを書きなぐったノートをビリビリ破いては、
    酒をおごってくれたファンにひとりずつ手渡していた。



    リバティ―ンズは、いつだってそんなバンドだった。

    かっこよくて、ろくでなしで、
    火花みたいで、いい加減で、
    優しくて、嘘つきで、
    ピュアで、行き当たりばったりで、
    何より、ロックンロール・バンドだった。
    最高のロックンロール・バンドだった。

    その後も来日のどたばたやら、大喧嘩やら、
    号泣やら、薬やら、不法侵入やら、
    裏切りやら、錯乱したメールやら、
    ほんとに色々あったけれど、
    リバティ―ンズにどっぷり嵌まっていたあの数年間は、
    つまり最高のロックンロール・バンドの物語を追っていた年月に他ならない。



    またそれを観れるかもしれないのだ。
    夢は終わってなかったみたいだ。
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