V・ウィークエンド新作を聴いた

V・ウィークエンド新作を聴いた

2010年1月リリースのVampire Weekendセカンド・アルバム『CONTRA』を聴く。

まさにセカンド・アルバムという言葉がぴったりのスケール・アップ。
彼ら特有のアフロ・テイスト、せわしなくアップダウンを繰り返すギター、ファルセットを自在に操るボーカル、そして室内楽を思わせるストリングスといったものは変わらずながら、その表現力が飛躍的に高まったことで、ツイストの利いた彼らのポップネスが王道の構えで聴こえてくる。

ただ、色彩としてはファーストが陽だったとしたらこのセカンドは陰で、センチメンタルでもある。ひとつひとつの音からエキセントリックな感じが抜けたこともあるだろうけど、要は年を重ねたということだろう。キラキラの太陽ではなく、夕暮れであり、寒風の吹く海岸、でもある。そのあたりも、エモーションの奥行きを伝えている。実際、びっくりするような音のランドスケープを展開する楽曲もある。

それにしても、なぜそもそもVampire Weekendは「そのような音」でパンクを鳴らすのだろうか。歪んだギターではなく爽快なギターで、潰れた声ではなくヨーデルのような品のある歌声で、街のサイレンではなく高級なストリングスで、彼らはパンクとしか呼び様のない小品のポップ・ソングを丁寧に包装する。もちろん、これまでになかった型破りなアレンジも過剰なまでに注ぎ込まれるのだけど、だからといってそれらはまるでアグレッシヴでもダーティでもない。

そして、それによって、彼らのパンクはこれまでになかった類のパンクとして、つまりは、抗菌されデオドラントされたパンクとして立ち現れてくるのである。そして、それは新しかったのだ。

なぜか。それが彼らにとってリアルだったからである。中産階級者としての、ディレッタントで、スノビッシュで、インテリゲンチャな自分たちそのままによるパンク。それは、破れたシャツを着てマイクをふん掴みギターを歪ませてがなりたてるパンクの「真似」をすることでは決してなかった。そうではなくて、そのような自分たちの立ち位置に忠実で誠実なパンクの在り様としての音が、Vampire Weekendにたどり着いたのである。平たく言ってしまえば、お坊ちゃんだってお坊ちゃんなりの抵抗はあるんだという、ロックの世界ではあまりなかったその真摯さがこの音を特別にしたのだと思う。
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