モリッシーは可笑しい

モリッシーは可笑しい

文学性の高いリリックを書いてきたアーティストはそれこそたくさんいる。
けれど、これほど可笑しい歌詞を書いてきたアーティストは、モリッシーだけだ。

特にソロになってからその傾向は顕著、というか歯止めのきかない暴走ぶりなのだけど、
たとえばタイトルひとつとっても、もってまわった言い回しでトホホなことを綴っているものはたくさんあるし、歌のオチがもうしんみりどころか泣き笑うしかないことになっているものも多数だ。

一番有名なのは、ザ・スミスの「HOW SOON IS NOW?」だろう。
キミはひとりでクラブに出かける
誰かに会うために
誰か仲良くなれる人と出会うために
でもそんな人とは出会えない
キミはひとりで家に帰る
そして泣いて
死にたくなる
といったようなことを、非常にメロディックに、まさしく「オチ」というポイント目掛けて歌っていくモリッシーは、ある意味サディスティックであり、同時にドのつくMである。

最近でもっとも秀逸だったのは『ユー・アー・ザ・クワーリー』に収められた「LET ME KISS YOU」だった。あのもうほとんどギャクとしか言いようのないストーリーはぜひ確認していただきたい。

誤解されているのは、ザ・スミスもモリッシーも、そのファンがほとんど宗教的に、生真面目な信者であると思われているところだけど、そんなことはなくて、すくなくとも自分は曲を聴きながら爆笑していることも多い。モリッシーほど絶望をユーモラスに描くリリシストはいないと思う。

この最新Bサイド集『Swords』でも、それは健在だ。
「MY LIFE IS A SUCCESSION OF PEOPLE SAYING GOODBYE」ではこんなくだりがある。

人生の中で最良のものたちはみな、ガラスケースの向こう側にある
それは、お金
宝石
肉体

この肉体、FLESHという言葉を、
モリッシーはその30年にもなろうかというキャリアにおいてもとびきりに最大なエコーをかけて歌うのだけど(ふれっええええしゅうううううぅぅぅぅぅぅという感じです)、
その瞬間、昇天しそうになる。
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