Ariel Pink’s Haunted Graffitiの『Before Today』を選出。
このアルバムについては、実はよくわからない。というか、「わからない」ということが、この普段はなんだか「よくわかった気になっている世界と自分」を猛烈に揺さぶってくるというアルバムである。
とにかく、このアルバムに登場(?)してくるAriel Pinkことアリエル・マーカス・ローゼンバーグという人物が、よくわからないのだ。簡単に言ってしまうと、狂っているように思える。いや、狂っているというような「わかったようなレッテル」すらも、ちっとも本人とその音に届いていない気がする。要するに彼はアンタッチャブルなのである。
そんなことが可能だろうか。この現代で、どこにも属さず、どことも関わらず、言葉本来の意味で孤高であることなど、可能なのだろうか。
Ariel Pinkを聴いていると、なぜだか無性に涙が出てくる。激しく哀しくなってくる。それは、彼が現代に残された最後の孤独のようなものだからかもしれないと思うのである。