アデルが泣きながら「ビヨンセが獲るべきだった」とスピーチしたグラミー賞。「白すぎる」グラミーへの反発高まる


グラミー賞最高の栄誉である最優秀アルバム賞を受賞したアデルは、受賞後に行われた記者会見で、「ビヨンセが最優秀アルバム賞を受賞するために、これ以上ファッキン何をしなくちゃいけないわけ」と語った。

最優秀アルバム賞を受賞した彼女が、ステージで涙ながらに、「この賞を受け取るのは不可能だわ」と言い、「今年の最優秀アルバム賞は絶対にビヨンセの『レモネード』が獲るべきだった」という意味のコメントをしたことへの説明を求められて語ったのだ。

アメリカのメディアの多くは、このアデルのコメントが、視聴者の気持ちを代弁していたと書いていた。最高の賞をもらった本人が、自分の喜びを語るのではなく、泣きながら、これは間違っていると言わなくてはいけない賞の意味って何?と多くの人が思って当然である。アデルもそんな複雑な立場に追いやられてかわいそうだった。

今回ビヨンセではなく、アデルが受賞したことは、大きな論争となっている。

NYタイムズ紙は、「『白すぎる』グラミー賞が現実となった日」との記事を掲載。
https://www.nytimes.com/2017/02/13/arts/music/grammys-adele-beyonce-black-artists-race.html

ワシントン・ポスト紙は、「アデルが、ビヨンセを差し置いて最優秀アルバム賞を受賞したことで、グラミー賞が、今の時代何の意味もないことが頂点に達した」という記事を掲載。
https://www.washingtonpost.com/news/arts-and-entertainment/wp/2017/02/13/adele-bests-beyonce-and-the-grammys-reach-peak-irrelevance/?utm_term=.e8c674cf6474

老舗文芸誌のニューヨーカーは、「毎年、今年こそはと思って見ているが、グラミー賞が時代精神を映し出す日が来るなどということはないのでは?」という記事を掲載。
http://www.newyorker.com/culture/culture-desk/the-2017-grammys-have-no-answers

公共ラジオのNPRも「人種差別のシステムを説明するのは難しいが、グラミー賞こそ、人種差別主義のシステムを明確に提示している」という記事を掲載。
http://www.npr.org/sections/therecord/2017/02/14/515024057/the-problem-with-the-grammys-is-not-a-problem-we-can-fix

ローリング・ストーン誌は、「ビヨンセではなく、アデルが受賞した5つの理由」を掲載し、そのトップ2の理由として「投票者が白人で、年寄りだから」と書いていた。
http://www.rollingstone.com/music/news/5-reasons-why-adele-won-album-of-the-year-instead-of-beyonce-w466751

今年のグラミー賞最大の注目は、「アデルVSビヨンセ」だった。ほとんどのメディアは、ビヨンセの『レモネード』が獲るべきとしながらも、これまでグラミー賞が、いかに人種差別主義的であり、保守的であり、時代遅れなのかを考えると、実際はアデルが獲るかもしれないと予想していた。

フランク・オーシャンは早くからそれに抗議して、自分の作品を候補作品として提出しなかったばかりか、Tumblrでそれについてさらに説明した。カニエ・ウェストも、ドレイクもグラミーのこの傾向に抗議して出席しなかった。

アデルは、今回ノミネートされた5部門ですべて受賞。『21』同様、グラミー賞で最も重要な3つの賞、最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞を受賞。3冠を2回獲った史上初のアーティストとなった。
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