フランク・オーシャン、「年寄り」とグラミー賞プロデューサーを反撃する長文をTumblrに掲載。全文訳

フランク・オーシャン、「年寄り」とグラミー賞プロデューサーを反撃する長文をTumblrに掲載。全文訳

2月12日(日)にグラミー賞が発表されたが、フランク・オーシャンは、最優秀アルバム賞で黒人のアーティストが受賞しないことに異議を唱えて最新作の『ブロンド』を提出せず、グラミー賞をボイコットした。

最近ローリング・ストーン誌がポッドキャストでグラミー賞の特集を行い、グラミー賞のプロデューサーであるKen Ehrlichと作家のDavid Wildが出演したのだが、その中で、フランク・オーシャンが今年出演をボイコットした件について語っていた。その理由として、2013年にグラミー賞に出演し、”Forrest Gump”をパフォーマンスしたが、それが失敗したことを引きずっているのではないかと言ったのだ。また、事前に彼のパフォーマンス案がTV向きではなく「欠陥がある」と忠告もしたと語った。

それを受けてフランク・オーシャンがTumblrで激しく反撃した。「俺達はどうせみんな死ぬんだし、お前は年寄りだから、言ってやる」と。
http://frankocean.tumblr.com/post/157125310721/ok-ken-and-david-as-much-as-i-hate-to-make-you

以下全文訳。
「オーケー、Ken(そしてDavid)。お前達を有名にしたくもないし、こうやって直接反応することすら嫌なんだけど、俺達はどうせみんな死ぬんだし、お前は年寄りだから、言ってやる。

そうそう2013年の俺のパフォーマンスは、マジで最低だったよ。技術的な問題があったとかなんとか。わざわざ思い出させてくれてありがとう。だけど、あのパフォーマンスがなんだよ。あの時パフォーマンスを失敗したから、俺が今年作品を(グラミー賞に)提出しなかっただって?もし俺がそんな風に思ったんだとしたら、むしろ今年パフォーマンスすることで、”名誉挽回”したかったはずだと思わないか?

それに実際は、番組に出演してプリンスの功績を讃えたいと思ったくらいだった。

だけど、本当に彼の功績を讃えるなら、自分なりに成功し続けることだと思い直したんだ。TVで賞をもらうことが、俺に成功の名をくれるわけでもないと。それが分かるまでに少し時間はかかった。だけど、去年俺は自分が大成功している時に、マスターを全部買い戻した。それは成功と言える。それから、『ブロンド』はレーベルもなしで、100万枚以上売れた。それも成功と言える。

俺は、まだ若くて、黒人で、才能があり、そして独立している。それが俺なりのプリンスの功績への讃え方なんだ。

それに実は今年はCBS(グラミー賞)の中継を見ようと思っていた。誰が最優秀アルバム賞を獲るのか見たかったからね。というか、何が本当に”最高とは言えない”TV番組なのか分かるか?

それは、(ケンドリック・ラマーの)『トゥ・ピンプ・ザ・バタフライ』ではなくて、(テイラー・スウィフトの)『1989』が、最優秀アルバム賞を獲るということだよ。

さすがだね。あれこそが、俺がこれまで見た最も”欠陥がある”TV番組だったから。俺は視聴者を信じる。視聴者は、あまりにTV番組がつまらなくて眠くなっちゃうから、みんな翌日に選んでYouTubeを見るだけだと思う。

どうせなら、マジで蓄音機(グラミー賞のトロフィーの形)でも使って聴いたらどうだ?僕は今いる最高のアーティストのひとりだ。文化的偏見とお前達が作る番組が生み出す苦痛について話し合いたいなら、もちろん応じるつもりだ。じゃあな」

フランク・オーシャン以外にも、カニエ・ウェストとドレイクとジャスティン・ビーバーがノミネートされているがグラミー賞への出演をボイコットしている。

しかし結果はすでにご存知のように、フランク・オーシャンが訴えていた通り、結局ビヨンセを最優秀アルバム賞で受賞することはなく、アデルが受賞した。その瞬間に、妹のソランジュは、フランク・オーシャンのTumblrのリンクをツイートしていた。また黒人の女性アーティストがいかに最優秀アルバム賞を受賞しないのかも。そのツイートは今は削除されている。

グラミー賞の歴史59回で、黒人のアーティストが最優秀アルバム賞を受賞したのは全部で10回しかない。この10年間でも黒人のアーティストは、最優秀アルバム賞に17回ノミネートされているが、獲ったのは1回だけだ。2008年のハービー・ハンコック。しかし、受賞した作品は、『River: The Joni Letters』で、ジョニ・ミッチェルのカバーだったため、曲を作ったのは、白人アーティストだ。

黒人の女性アーティストが、最優秀アルバム賞を獲ったのは、なんと18年前、1999年のローリン・ヒルにまでさかのぼる。その前は、1994年のホイットニー・ヒューストンだ。その一方で、アデルと、テイラー・スウィフトは、この7年間に2回ずつ最優秀アルバム賞を受賞している。

NYタイムズ紙はこのままでは、ボイコットするアーティストが将来増える一方だろうと報じている。
https://www.nytimes.com/2017/02/13/arts/music/beyonce-adele-grammys-backlash.html

スフィアン・スティーブンスも、ビヨンセが、最優秀アルバム賞ではなく、アーバン・コンテンポラリーしか受賞しないのは、ビヨンセがパワフルで、才能があることを、「白人のオヤジが恐れているから」とウェブサイトでコメント。「人種差別はやめよう」と書き込んでいる。
http://sufjan.com/
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