日本でも去年開催され大成功を収めたデヴィッド・ボウイの大回顧展“DAVID BOWIE is”。とうとうボウイが“我が家”と呼ぶNYにやって来た。ここが回顧展の最終地となる。
早速行ってきたのだが、何とさすがボウイが住んでいたNY。他国に比べて展示作が100点も増えていたのだ。
今回初公開された作品は、例えば以下の作品など。
“フィラデルフィア”コーナー:『ヤング・アメリカンズ』のレコーディングがされた場所
ローリー・アンダーソンとのコラボレーションで描いたドローイング”Line”
『ジギー・スターダスト』時代の衣装を追加
パフォーマンス映像追加
『サウンド+ビジョン』ツアーの背景
『地球に落ちてきた男』の脚本や絵コンテ、カチンコなど
“★”のボウイによる絵コンテ、コンセプトなど
個人的に見入ってしまったのは亡くなる少し前、2015年9月に撮影された“★”のMVのアイディアや、アルバム全体のコンセプトなどをボウイがノートに描いたもの。何もかも細かくぎっちりと、しかもあまりに美しく描かれていたのだ。
新しく展示された作品は、ここで幾つか見られる。
https://www.nytimes.com/interactive/2018/02/27/arts/music/david-bowie-is-brooklyn-museum-exhibit.html
「The New York Times」の記事の中で、友人達が思い出を語っている。
ーナイル・ロジャース:『レッツ・ダンス』のレコーディングの前に、インスピレーションを探して歩きまわっている時にボウイが、リトル・リチャードが赤いスーツを着て、赤いコンバーチブルに乗るイメージを作って『ダーリン、僕はこういう音がするアルバムを作りたいんだ』、と言ったんだ。『ナイル、これがロックンロールだよ』ってね」
ーローリー・アンダーソン:「私は彼に会ってすぐに大好きになった。なぜなら彼はトラブルメーカーだったから」
彼とのコラボレーションについては、「デヴィッドから電話がかかってきて、『君には僕の心が読めると思う』と言われたので、私は『まさか、何を言ってるの』って答えたの」。
ボウイはローリー・アンダーソンに、ファックスのそばにペンと紙を持ってきて座るように指示し、会話をせずに、お互い紙に何かを描いてファックスで送り合う、という提案をしたそう。
「私はそんなの時間の無駄だと思った。だけどデヴィッドがすごく好きだったから『OK』っていったの。それで実際やってみたら、衝撃的な結果になった。というのも、二人が描いたものがあまりに似ていたから。文字の配置などもね」
お互い10枚ずつ描き、それがNYで初めて展示されている。
「デヴィッドは本当に素晴らしい友達だった。それからものすごく知覚の鋭い人でもあった。彼は幸せと喜びというものを本当に理解していた。それから、困難から絶対に逃げない人だった。アーティストとして彼は、本当の痛みがあるものが好きだった。人間として本当に偉大なる成功を収めた人だったと思う」
ーミック・ロック:「彼はどの角度から撮っても、悪い角度がない人だった。生まれつき、ものすごくフォトジェニックだったんだ」
「彼は日本に行って歌舞伎役者に会った後、メイクがよりエキゾチックになったと思う」
「彼はショーの前にはタバコを吸い、バナナを1、2本食べるくらいだった。それから彼はいつも驚くくらい何でも、きちんと整理整頓している人だったんだ」
ー山本寛斎:東洋と西洋の出会いについて「このミステリアスな化学反応は、様々な違いの中から引き起こされたのだと思う。そういうことはもう二度と起きないと思う。あまりに尊い出会いだった」
「僕が作った衣装は、西洋の服と比べるとより平面的なものだった。デザインする時には、実際の彼よりどうやったら背が高く見えるのかなどを考えながら作った。能や歌舞伎の衣装のように」
日本の回顧展より100点多いのはもちろん嬉しいが、その他、NYの展示の方がヘッドフォンの音がより良くなっているのも良かったと思う。ただ少し残念な部分もあった。ブルックリン美術館は日本の会場より広く、また天井も高いのに、展示の仕方がより普通の美術館になっていたこと。この回顧展の良さは美術館の展示の概念を変えるようなものだったと思うのだが、より壁に飾り、ケースに入れている、という印象が残ったのだ。
ブルックリン美術館の情報はこちら。
https://www.brooklynmuseum.org/exhibitions/davidbowieis
ちなみに、ここで売られているお土産は日本とは全然違っていた。すでに売り切れになり、eBayに出品されているブルックリン美術館の限定アナログ盤3枚の他にも、マグからTシャツなど、そのデザインは独自のものが多かった。私が行ったプレビューでもすでにレジは長蛇の列になっていてびっくりしたのだが、今美術館のウェブサイトをみたら、かなり多くのものがすでにここから消えている。まだ開始して1か月も経っていないのに!7月まで続くので、在庫は再入荷するとは思うのだが。
https://shop.brooklynmuseum.org/collections/david-bowie-is
NYに行く機会があったら是非。「The New York Times」でボウイゆかりの地なども紹介されているので、合わせてどうぞ。
https://www.nytimes.com/2016/01/31/travel/david-bowie-new-york-the-strand.html
これまで以下の地を巡り、180万人以上の観客を集めた”David Bowie is”は、7月15日で終了する。
1. Victoria and Albert Museum, London, UK (Mar. 23 – Aug. 11, 2013)
2. Art Gallery of Ontario, Toronto, Canada (Sept. 25 – Nov. 27, 2013)
3. Museum of Image and Sound, Sao Paulo, Brazil (Jan. 31 – 20 Apr. 20, 2014)
4. Martin-Gropius-bau, Berlin, Germany (May 20 – Aug. 24, 2014)
5. Museum of Contemporary Art, Chicago, USA (Sept. 23, 2014 – Jan. 4, 2015)
6. Philharmonie de Paris/Cite de la Musique, Paris, France (Mar. 2 – May 31, 2015)
7. Australian Centre for the Moving Image, Melbourne, Australia (July 16 – Nov. 1, 2015)
8. Groninger Museum, Groningen, Netherlands (Dec. 15, 2015 – Apr. 10, 2016)
9. Museo d'Arte Moderna di Bologna, Bologna, Italy (July 14 – Nov. 13, 2016)
10. Warehouse Terrada, Tokyo, Japan (Jan. 8 – Apr. 9, 2017)
11. Museu del Disseny, Barcelona, Spain (May 24 – Sept. 24, 2017)
12. Brooklyn Museum, Brooklyn, USA (Mar. 2 – July 15, 2018)