ジャック・ホワイト、YYYs他、ショーン・メンデス、ウルフ・アリス、ポスト・マローンなど日本の夏フェス組も出演!NYフェスガバナーズボールDAY1

pic by Akemi Nakamura

毎年恒例のNYフェス、ガバナーズ・ボールの熱い3日間が終わった!今年は、ジャック・ホワイト、トラヴィス・スコット、そしてエミネム!という強靭なヘッドライナーが揃い6月1-3日の開催。期間中には日本の夏フェスに出演するバンドも多数出るので、その最新情報をご紹介!


詳しくは7月に発売のロッキング・オンのコレポンのページで紹介する予定なので、ここでは速報!

まず初日のメンツはこんな感じ。


それぞれ楽しみ方は色々だと思うが、個人的なハイライトは、ウルフ・アリスヤー・ヤー・ヤーズ、ジャック・ホワイト、とロックンロールな1日だったということ。それと同時に、ショーン・メンデスや、ポスト・マローンなど、これまで観たことがなかったアーティストとファンの盛り上がり具合を観られたのもフェスならではだったと思う。


1)ウルフ・アリス(サマソニ出演)

pic by Akemi Nakamura

去年のフー・ファイターズフェス、CalJamで観たばかりだが、その時よりもさらにライブが良くなっているんじゃないかと思えた最高のライブ。もしかしたら同じくらい良いのかもしれないけど、始まった瞬間に、まるで初めて観たかに思える新たな衝撃を与えてくれたのが彼らのライブが素晴らしいところかもしれない。強烈なパンク・モードで攻撃的に始まったかと思うと、まず最前列のファンが大合唱だったことに感動したし、”Don't Delete the Kisses"で急にか弱い面をさらけ出し、そこから”Visions of a Life"でどっぷりディープな闇を探求する。

これまでは、90年代のオルタナ風だと感じる場面もあったけど、全体として完全に彼ら独自の型にはめられないサウンドとして鳴らしてしまっているところも感激した。何より、バンドの誰かひとりが引っ張っているというのではなくて、4人が均等にそれぞれの個性をぶつけ合いながら、前進しているというのがこのライブで何より感じられた。この日のベスト・アクトのひとつ。


2)ショーン・メンデス(サマソニ出演)

pic by Akemi Nakamura

急遽出演が決まり、短い枠での出演だったにも関わらず、この日最も盛り上がったライブのひとつ。何しろ女子のファンの絶叫と大合唱がすごい。ただそう思っていたら、男子も、野太い声で「アイ・ラブ・ユー!」と言っていたので女子ばかりでもなかった。

例えばエド・シーランなどの大成功があって注目された可能性もあるが、どの曲もポップ・ソングとしてものすごくキャッチーに出来ているし、彼の歌唱力も、バンドサウンドも、今のメインストリームのトレンド抜きにしても、人気を得ただろうと思える完成度だった。彼の個性がしっかりと確立できていると思った。

「自分が初めて観たフェスのひとつだったから、今自分がそこで歌ってるなんて、本当に感激」とこのフェスで一番かわいい笑顔で言っていたのが印象的だった。7曲の短いセットだったので、全曲大合唱であっと言う間に終わってしまった。


3) ポスト・マローン(フジロック出演)

pic by Scott Borrero
pic by Akemi Nakamura

ヤー・ヤー・ヤーズと重なっていたのだけど、アメリカのチャートを席巻しているのでこの機会に観ておきたいと思い、ヤー・ヤー・ヤーズを抜けて少しだけ観た。すごく語りたい人で、1曲1曲の意味を歌う前に説明していた。「この曲は、酔っ払って、ものをぶっ壊したりすることについて」(”rockstar’)とか、「これは俺を振って俺の心を引き裂いたビッチについて。あんなビッチはクソだ」(”I Fall Apart") と言った瞬間に会場から「うおーー!」の歓声が上がり、「みんなも同意してくれて嬉しい」と言ったり。

「何をしてもみんなに見られてるような気がして、それが今後は悪化するばかりだと思うことについて。みんなもそうだと思うけど」("Paranoid")。そして、「俺は12歳でギターを初めて手にして、YouTubeを見ながら練習して、いつの日かミックステープを作って友達に配った。その時から”お前は絶対成功する”と信じてくれた友達がいる。みんなも今日親友と一緒に来ているんじゃないかと思うけど」と親友に捧げたファースト・シングルにして大ブレイク作の”White Iverson"を披露。

それから、「曲が売れたら、一発屋だとみんなに言われた。でも、そうやって俺を信じてくれた親友達がいたからここまで頑張って、一発屋で終わらなかった。だからみんなに言っておきたい。誰が何を言おうと、自分のやりたいことをやり続けるんだ。誰も俺達に”それじゃダメだ”なんて言う資格はないんだから。そうじゃなかったら、俺が今日このガバナバーズ・ボールのこんな何万人もの観客の前に立ってるわけないんだから。だから俺を一発屋だと言った人達にこう言ってやりたい”Congratulations”(=おめでとう)」とも。

ステージの映像は夕日のオレンジで映されていて、それが彼の曲におけるアウトサイダー達への乾杯とセンチメンタルな気分を象徴していたような気がする。集まったファンは大合唱。数もこの日メイン・ステージ以外では最大だったと思う。


4)ヤー・ヤー・ヤーズ

pic by Akemi Nakamura
pic by Akemi Nakamura
pic by Charles Reagan Hackleman

「今はフルタイムで母をやっているから」と4年間ライブをしていなかったヤー・ヤー・ヤーズだが、去年久しぶりにライブを開始。去年ブルックリンで”復活”ライブも観たが、この日は、バンドがフルタイムで完全にステージに戻ってきた、と思える完璧な内容だった。

カレンOの子供っぽい万遍の笑みと水を吹き出すパンクスピリットの共存も健在だし、そのカリスマ性もまるで衰えない。それを支える天才ギタリストのニック・ジナーが作り出す世界観がこの巨大なステージだとより堪能できる内容になっていて感無量。ステージに登場してから歌う前に、カレンOとニックがしばし向き合って精神統一していた姿に感動した。

バンドの絆というか、昔インタビューした時に、カレンOが「ロック・バンドをやるというのは戦いだから」と言っていたのを思い出して、ちょっと涙が出そうにもなった。もちろんドラムに座っているブライアン・チェイスも心は一緒だったと思う。戦士達が戦いの前に絆を交わしている瞬間のように思えたのだ。カレンOがすごいのは、この直後には笑顔で飛び跳ねていたことだ。


5)ジャック・ホワイト

pic by David James Swanson

思えばこの日、ヤー・ヤー・ヤーズに続き、メインステージのトリがジャック・ホワイトというのも感慨深い。両バンドともガラージ・ロック・シーンの流れで登場し、それから15年後にフェスのメインステージに立ってるとは思っていなかたっと思う。

ジャックの場合は、それからいくつもバンドを作り、そして今ではロック・シーンを背負って立つ存在にまでなっている。この日のライブもその期待を全く裏切らない最高の内容だった。もうジャックのライブは数え切れないくらい観ているが、それでも前回の衝撃を上回る内容。それはジャックのライブが変わり続けているからというのもあると思う。どこにも手抜きがない。セットリストは相変わらずないので、指示出しに余念がないし、”We're Going to be Friends"のような過去の名曲も新たなキーボード・アレンジでさらに子供っぽいピュアさとドリーミーな面が出ていた。

かと思えばステージの映像も凝っていて、個人的にこの日一番衝撃だったのは、新作からの”Everything You've Ever Learned”だった。「お前は全てが欲しいのか?だけどその全てというのは何なんだ?」とジャックが語りかける曲だが、それがSFのような映像とともに紹介されて、異様に不気味かつジャックの新境地でもあったため、これまで観たこともない場面であまりにスリリングだったのだ。

ジャックは途中で、「俺に本当にもっとライブをやって欲しいか?」と語りかける場面があり、「本当にそう思っているならこの曲を歌って欲しい」と言って、”Steady As She Goes”が大合唱となった。

今回のツアーでは携帯が禁止なことも話題となったし、最新作からのファースト・シングルが”Connected by Love”だったが、自分のライブで観客とどこまで心から繋がりあえるのかを、このステージでも確かめようとしているようだった。そのためにジャックは120%彼の魂を込めて、始まりから終わりまで1秒も気を緩めることなくステージに立っていた。

pic by David James Swanson
pic by David James Swanson
pic by David James Swanson

"Icky Thump”では、トランプを名指しで批判する場面もあった。最後の”Seven Nation Army”の大合唱で、観客席に近いステージまで降りてきたジャック。そこで何かをやろうとしたみたいでスタッフに指示出していたのだけど、それがどうも上手くいかなかったようだ。どんなことを思いついたのか分からないけど、そんな定番の盛り上がりの場面でも気を抜いていないジャックの、本当に最高のライブだった。

pic by Akemi Nakamura

実はフェスのあるあるで、ジェイムス・ブレイクとジャックが全く重なっていて心引き裂かれる思いだったのが、何年も観ていなかったこともありまずはジェイムス・ブレイクに。しかし始まり方が何年も前に観たものと同じだったので、すぐにジャックに走ってしまった。

帰り道で、その興奮覚めやらぬ10代の男の子達3人がジャックのステージでどこまで近づけたのかを元に、エミネムの時は、その前に他のステージで観ているLil Uzi Vertのステージを何時に去るべきか語り合っていって微笑ましかった。「エミネムの方がファンが多いのは当然だけど、問題はジャックと比べてどれくらいハードコアファンがいるかってことだよな」と。そういう話を聞いている時が個人的には一番幸せでもある。

pic by Akemi Nakamura
pic by Akemi Nakamura
pic by Akemi Nakamura
pic by Akemi Nakamura
pic by Akemi Nakamura
pic by Akemi Nakamura

以下、日本のフェスの参考のためにこの日のセットリスト。

ウルフ・アリス
Moaning Lsa Smile
Yuk Foo
You're A Germ
Lisbon
Don't Delete the Kisses
Beautifully Unconventional
Formidable Cool
Sadboy
Space & Time
Visions of a Life
Fluffy
Giant Peach

ショーン・メンデス
There's Nothing Holdin' Me Back
Stitches
Ruin
Lost in Japan
Mercy
In My Blood
Use Somebody/ Treat You Better

ポスト・マローン
Too Young
Better Now
Takin' Shots
No Option
Deja Vu
Psycho
Candy Paint
Paranoid
I Fall Apart
Up There
Go Flex
rockstar
White Iverson
Congratulations

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