ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドキュメンタリー映画が今日から日本でも配信開始。監督のトッド・ヘインズが語る。【NY映画祭】

ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドキュメンタリー映画が今日から日本でも配信開始。監督のトッド・ヘインズが語る。【NY映画祭】 - Apple TV +Apple TV +

ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドキュメンタリー映画『The Velvet Underground』が、今日から世界中でApple TV+から配信された。日本でも見られる。
配信はこちら。
https://tv.apple.com/jp/movie/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%88/umc.cmc.69ic79cvvy80epfhz5efdgjjd

予告編はこちら。

今作はNY映画祭でも先に公開されたため、監督のトッド・ヘインズに記者会見で話を聞く機会があった。以下要約。

ルー・リードには会ったことはあるのか?

「それがないんだ。オープニングなどで見たことはあったけど、どうしても声をかける勇気がなかったんだよね(笑)」


●どのように映画が始まったのか?

「まずは、映画を作るにあたり足りない素材は何なのかを考えた。ルー・リードと、スターリング(・モリソン)とニコもいない。それから難しかったのは、彼らには、普通のロック・バンドのドキュメンタリー映画のように、プロモ映像もなければ、コンサート映像もなかったこと。

でも、その代わりに、当時のアバンギャルド映画の映像を使えた。そこにこそヴェルヴェット・アンダーグランドは存在していたからね。とりわけアンディ・ウォーホールの作品と映像があった。アバンギャルド映画の素材もたくさんあった。このバンドは、60年代に起きていたことや、映画監督と深く関わっていたから。だからそれをこの映画の中心にすることにしたんだ。

結果この映画は、普通のロック・ドキュメンタリー映画と違って、全体の歴史を言葉で語っていく作品にはなってない。代わりに、イメージや音楽が映画の体験として心に残る作品にしたかった。

それ以外にも、音楽、映画、アートにおいて、ものすごくクリエティブな活動が彼らの周りで起きていた。だからこの映画ではそれを丸ごと使うことにしたんだ。そこがこの映画の全体像を考えるきっかけとなった。おかげで、1960年代ニューヨークの個性的で、カウンターカルチャーとなった文化的でクリエイティブな実験的映画を多く使えた」


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●最初に手にした素材は何だったのか?

「もちろんジョナス(・メカス)とアンソロジー(・フィルム・アーカイブス)。2018年、ジョナスが96歳になった時に、この映画のインタビューを開始した。それから、もちろんウォーホール美術館。ピッツバーグに行き、素晴らしいアーカイブを見せてもらい、それもこの映画の中心となった」


●これが初めてのドキュメンタリー映画となった理由は?

「僕の映画は大抵過去が舞台となっているし、ミュージシャンや、音楽のジャンルについて特定した作品も作ってきた。デヴィッド・ボウイ(『ベルベット・ゴールドマイン』)とか、ボブ・ディラン(『アイム・ノット・ゼア』)、またはカレン・カーペンター(“Superstar: The Karen Carpenter Story”)について、深く探求し、彼らの伝記やそれを元にした映画を作る時に、必ず当時の映像や写真なりを見ることになる。それを見ると驚愕することがあるんだ。だから、それを使わないでボウイやボブ・ディランのイメージを再構築するのは、どこか神聖ではない感じがする。だから僕は、彼らの作品の場合は、意図的にフィクションにしたんだと、伝える方法を考えた。つまりそうすることで、観客が知っているボウイやボブ・ディランのイメージと僕の作った映画の間で、自分なりの見方を選択できる。それが、それらの映画の作り方だった。

だけど今回の場合、ヴェルヴェット・アンダーグランドの映画をフィクションで作るのは、絶対に無理だと思った。それにこの映画は様々な映画監督についての映画でもあるわけだしね。この映画は、僕らが集めたあの当時の映像へのオマージュでもある。そしてアンディー・ウォーホールが集めたこのバンドのイメージへのオマージュでもある。それを再構築するなんて絶対にできないと思った。

しかもこれは、あの非常にユニークで、ラジカルな時代を観客に紹介する機会でもあるわけだしね」


●ボウイ、ボブ・ディランの映画はどのように違うアプローチだったのか?

「『ヴェルヴェット・ゴールドマイン』はとりわけファンダムをもとにした作品だ。グラム・ロックがいかに海を挟んで両サイドに存在し、ニューヨークから、ストゥージズ、ボウイ、ロキシー(・ミュージック)などがいかに独自の解釈を広げたかを描き、でもファンもその過程に参入し、自分自身をその中で創造し参加し、変貌することができるのかを描いた。

それで、ディランの映画は、このアーティストが、いかに必要性から、または生まれ付き、非常に凝縮し緊迫した時代に、自分の成功からサバイバルするためにいかに作品ごとに、時代によって、態度によって、自分を変えていったのかについて。それはほとんど攻撃的な必然性とも言え、ボブ・ディランは自分を殺すことで、自由な空間を作り、再スタートした。しかもすべてはすごいスピードで進んでいる時だった。彼はその全てを吸収していた。それで彼は幾つものペルソナを象徴しながら、アメリカのジャンルも描写していたと思う。真実を語ること、プロテストを歌うこと、社会の回答に対していかに詩的な反抗をしたのかなどについて。

それでこの映画とバンドが独自なのは、グラム・ロック時代の前章みたいな役割だということ。しかも、アートやステイトメントでは異性愛を基準としない態度で、よりダークで不穏をサウンドでそれを表現しようとした。1960年代には様々なことが起きていたけど、でもヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ルー・リードは、人間の脆さや、男性のか弱さや、痛みについて、自分の人生を破棄したい思うことについて歌っていた。それは誰もが思っていたことだったけど、1960年代に素晴らしい作品がたくさん生まれたのに、ポップ・カルチャーでそれを歌っている人たちは誰もいなかったんだ。ヴェルヴェット・アンダーグランド以外はね」


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●ヴェルヴェット・アンダーグランドにどのような影響を受けたか?

「僕はもともとボウイとか、ロキシー・ミュージックとか、パンクとか、パティ・スミスを聴いていたわけだけど、大学時代にヴェルヴェット・アンダーグランドに出会って、自分が存在すると知らなかった自分のルーツを発見したように思えた。僕に独自の影響を与えたんだ。まるでクリエイティブな場所に誘われているような、『君にも声があるんだよ』と言われているようだった。『君もアイデンティティや文化や、クィアネスに関して僕らと似たような疑問を抱いている』と直接語られているようだった。

他のバンドでは感じない自分の深いところにある感情や、願望、矛盾などに直接語りかけてきたんだよね。だから、必然的に、クリエティブな反応をしたんだと思う。ブライン・イーノが言ったことで有名だけど、『たった5000人しかアルバムは買わなかったけど、その5000人全員がバンドを始めた』ってね。それが僕にも理解できた。彼らはニューヨーク・カルチャーの中心にいて、それを広めていたんだ」


●ロック・ドキュメンタリー映画として特殊な構造になっているが。

「それは当時のN Yのクリエイティブなカルチャーで起きてい他ことに大きく影響されたからだ。ビジュアル・アーツ、映画、ポエトリー、ダンスなどが常に交わり合っていた。そういうシーンで音楽がどんな風に関わっていたのかを考えたんだ。それをビジュアルで表現する方法を、時間をかけて探求した。ジョン・ケイルが探求したようにね。そして彼がいかにしてルー・リードに出会ったのかとかね。

それで最近この映画の試写を観て気付いたんだけど(笑)、おかげでアルバムに収録されたルー・リードのボーカルが入ったヴェルヴェッツの曲に戻るに1時間くらいかかる(笑)。だから観客は何の映画を観ているのか途中で忘れてしまうじゃないかと思った。夢を見ているような気分になり、ヴェルヴェッツの音楽を裏口から再発見したような気分になるじゃないかと思った。それが彼らの音楽が何だったのか、そして、なぜラジカルだったのかを知る最高の方法なんじゃないのかなと思ったんだ」


●ここで描かれているアーティストについてまるで知らない観客にはどのように観てもらいたいか?

「もちろん、この音楽やアートが僕に影響を与えたように影響を与えて欲しいとは思う。それから彼らの慣例に対する反抗精神を再評価してもらいたいと思う。というのも、現代の資本主義に支配されたカルチャーにおいて、若者達は、必ずしも、『ノー』と反発したりしないように思うし、その巨大な機械の外側に立とうとしないように思うからね。でもそこでこそ偉大なアートは起きているものだ。だから、ありきたりのカルチャーに反発しなくちゃいけない。1960年代というのは、とりわけ多くのことが起きていたから、それをやり遂げるには、いつも以上に不屈の精神が要求されたと思うんだ」




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