ジョニデ、エディ・ヴェダーらも支援し続けた冤罪死刑囚らが18年間投獄の後、遂に釈放!

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無罪なのに、自分の人生の18歳から36歳までを刑務所で、しかも死刑囚として過ごすことを想像してもらいたい。無理である。


しかし、それに耐えた人がいる。そして彼がこの週末突然18年間の投獄生活の後釈放された。


ウエスト・メンフィス3という事件があったのをご存知だろうか?
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%B93%E4%BA%8B%E4%BB%B6


エディ・ヴェダーや、ジョニー・デップらが熱心にその犯人とされた3人を支援し続けた事件であり、だから私も知ったのだが、1993年にアメリカのアーカンソー州で起きた少年3人の殺人事件だ。


8歳の男の子3人があまりに残虐な姿で殺されていたのが見つかったのだが、警察は犯人を捕まえることができず、しかし地域の住民のパニックを収めるために、何の物的証拠もないのに、当時18歳だった青年3年を逮捕したのだ。


詳しくは省略させていただくが、簡単に言ってしまえば、その殺され方が残虐だったため、普段から黒い服を着て、ハードロック(メタリカなど)を聴いていた、ちょっと不気味な彼(ダミアン)がやったに違いないと、主犯格の青年を捕まえ、死刑に決定した。そして、彼の友達ふたりは終身刑となった。


しかし、当初から彼らは無実だと訴える人が絶たず、それが”Paradise Lost"というドキュメンタリーとなり、1996年アメリカのケーブル局HBOで放送となった。


そして、このドキュメンタリーを観たエディ・ヴェダーらが、彼らの釈放を訴える運動を開始したのだ。その他にも、パティ・スミス、ベン・ハーパー、ナタリー・メインズ(ディキシー・チックス)、ジョセフ・アーサー、ダーニ・ハリスンなどが支援を続けた。この映画がなかったら、ダミアンの死刑は今頃執行されていただろう。
http://www.wm3.org/


ちなみに、この映画は、メタリカが初めて、映画のサントラに曲を提供することを許可した作品で、さらに、この映画の監督が後に、メタリカの”SOME KIND OF MONSTER"を手がけている。


何が恐ろしいって、考えてもみて欲しい。アメリカの小さな田舎町で、全身黒い服を着て、ヘヴィメタを聴き、ノートに不気味な絵を描いていた様子のおかしいアウトサイダー、というだけで死刑囚にされてしまったら、私がこれまでインタビューしてきた天才的なアーティストは全員が捕まってしまう。


とにかく彼らの支援者は増えるばかりだったが、物事が進むのには、非常に長い時間がかかった。


それが、DNA鑑定のシステムが生まれたことで事態が好転した。2007年に彼らも鑑定に漕ぎ着け、その結果、現場に残されたDNAは、この3人のものではないことが判明。のみならず、それは殺された少年ひとりの義理の父と一致したのだ。


ちなみに、このDNA鑑定や裁判にかかった資金の大部分は監督のピーター・ジャクソンが払い、この手の裁判に強い一流の弁護士、私設捜査員なども彼が集めたという。


その証拠を元に再審請求をしていたのだが、週末突然の釈放となったのだ。


しかし、だ。これは諸手で喜べる釈放ではない。


この釈放には、非常に稀でややこしい”Alford Pleaという措置が取られた。これは、釈放する代わりに、自分達が殺した、と認めなくてはいけないということなのだ。彼らは刑をまっとうした。この事件は解決という形を取って釈放されるのだ。


釈放されたうちのひとりは記者会見で「これは正義ではない」と言っていたが、「それを拒否して、このまま刑務所にいると、ダミアン(死刑囚)が殺されてしまうので、これしか手段がなかった」と悔しそうに語っていた。


ちなみに、釈放の日、現場に出向いたエディ・ヴェダーはこうコメントしている。
http://www.pearljam.com/news/west-memphis-3-are-free


「とにかく、この無実の3人が自由の身となったことを祝福したい。しかし、正義は半分しか施行されていないということをここで改めて訴えておきたい。


3人の人間は、冤罪により人生の18年間を失った。そして、少年3人を殺した真の犯人はまだ裁かれていない。


今後は、ウエスト・メンフィス3の3人が新たな人生を築き上げていくことを、そして、真犯人の捜査が勢力的に行われることを、僕は願ってやまない。」と。


さらに、以下死刑が確定していたダミアンのコメントの抜粋だ。まず、長年支援してくれた多くの人に深く感謝の意を表した後で、


「僕は人生のちょうど半分を死刑囚として過ごしたことになる。それはあまりに過酷で、人間が耐えうる環境ではなく、今後絶対にあってはならないことだと思う。僕は無実である。ジェイソンとジェシーも無実である。しかし、今回僕がこの決断を下したのは、もう1日たりとも、刑務所で過ごしたくなかったからだ。僕は生きたかった。そして僕の無実のために戦いたかった。正義というのは、時にきれいでも完璧でもない。しかし、僕は自由の身になるために、この機会を逃すわけにはいかなかった。


アメリカには、僕のようにまだ冤罪の人間がたくさんいる。自白を強制され、死刑や、終身刑が確定している人達が。僕は、いつの日かその人達が家族や友達とともに、無実を証明できる機会が訪れることを願ってやまない。


この経験のすべては、僕に、人生と、人間の本質と、アメリカの正義、生き残ること、そして超絶性について多くを教えてくれた。


僕は、その教訓を、これから始まる新たな人生の旅路に活かしていきたいと思う。そして、その道のりで、人生におけるありきたりの日々、クリスマスやハロウィン、そして僕の誕生日などを、愛する人々と供に過ごすことを心待ちにしている」。




なんともやりきれないが、少なくともドキュメンタリーが作られたことで彼らの命が救われたこと、そして、彼らが今は家のベッドで眠っていること、その事実が今のせめてもの救いである。


ちなみに、ドキュメンタリーはその後も作り続けられ、最新作の第3章が、トロント映画祭で上映されことになっていた。実はこの突然の釈放の前に完成していたのだが、現在至急エンディングを作り直しているそうだ。
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