レイジ以外の90年代バンドも中絶禁止に猛烈反抗。グリーン・デイのビリー・ジョーは「ファック・アメリカ! 俺は市民権を放棄する」、パール・ジャムのエディ・ヴェダーは「中絶賛成じゃない男にはセックスさせるな」、レッチリのフリーは逆立ち(?!)。

レイジ以外の90年代バンドも中絶禁止に猛烈反抗。グリーン・デイのビリー・ジョーは「ファック・アメリカ!  俺は市民権を放棄する」、パール・ジャムのエディ・ヴェダーは「中絶賛成じゃない男にはセックスさせるな」、レッチリのフリーは逆立ち(?!)。 - Ⓒ Life Is Beautiful 2021Ⓒ Life Is Beautiful 2021

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのみならず、米最高裁が中絶の権利を認めない判決を言い渡して以来、またはそれ以前にその草稿がリークして以来、その他の90年代バンドも強烈な反抗の表明をしている。

グリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロング。

最高裁の言い渡しがあった直後、6月24日にロンドンのロンドン・スタジアムでライブ。なんと75000人のファンを前に、「ファック・アメリカ!」と叫んだ。映像こちら。

ビリー・ジョーが大きな話題となったのは、その後に「アメリカ市民権を放棄する!」と言ったこと。

「ファック・アメリカ、俺はファッキングアメリカ市民権を放棄してやる。ファッキングここに住んでやる。あまりにファッキングアホみたいなことが起きすぎて、あの惨めな国に戻る理由もなくなった」。

そこで観客大歓声。ビリー・ジョーは笑顔。

「いやまじだから。冗談で言ってるんじゃない。これから俺をここでたくさん見かけることになるよ」。

それにしてもこのライブの盛り上がりが異常だ。ビリー・ジョーがそれを言い始めるこの映像の30分位から見て貰えば分かる。これは、”Hitchin’ a Ride”の曲の途中で言ったものだ。

上は、Blabbermouth.netに貼り付けられていたファンによる映像で、フォール・アウト・ボーイと、ウィーザーと行った”The Hella Mega Tour”だ。
https://blabbermouth.net/news/green-days-billie-joe-armstrong-says-hes-renouncing-u-s-citizenship-after-roe-v-wade-repeal


パール・ジャムエディ・ヴェダーは、草案がリークした際に、5月6日に行われたLAのライブで、「中絶に反対する男にはセックスさせるな」と言った。
https://loudwire.com/pearl-jam-eddie-vedder-pro-choice-remark-mike-mccready-womens-march/

Loudwireが報じる記事の中にファン撮影の映像がある。こちら。

これは、”Not For You”の中で語ったもので、3分過ぎくらいに見られる。

「女の子や女性達へ。男とデートし始めて、最後まで行くことになった場合、その男が中絶の権利に反対だったら、そいつにはセックスさせるな」と言った。

バンドは、この後、正式に最高裁が判決を言い渡した日にも、声明文を発表している。これはエディのライブでのコメントを使ってのもの。

「どんな人でも、政府も、政治家も、最高裁も、中絶と、バースコントロール、避妊薬を阻止するべきではない。どんな人もそれを選ぶ自由を得るべきだ。今日の判決は、全員に影響を及ぼし、中でも健康保険制度が使える州まで行くことができない貧しい女性に大きな影響を与える。

俺達は、絶対に反抗し続ける。これで引き下がったりしない。絶対に諦めない。

選挙の結果が重要な意味を持つ。俺達と団結し、投票して欲しい。CHOICEと855-812-VOTEにテキストしてくれ」


ご存知のようにエディは、昔から女性の権利のために闘ってきたアーティストだ。1992年にMTVアンプラグドに出演した際も、腕に「Pro-Choice!!!」と書いていた。この映像の2分30秒くらいのところ。

ちなみに、グリーン・デイはロンドンでライブをしていたけど、パール・ジャムも最近ロンドンのハイドパークで2日間ライブをやっている。

ジョニー・マーが2日とも参加して、初日はニール・ヤングの”Throw Your Hatred Down”をカバー、2日目は、ザ・フーの”Baba O’Riley”をカバーしている。以下映像。


レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーは、「女性が自分の体と命について自分で決める権利を支援する」とソーシャルメディアでコメントしていた。これは、去年テキサス州が中絶を事実上禁止した時に発表したもの。

レッチリも現在、ヨーロッパをスタジアムツアー中だ。そこでバンドとして直接的にそれに触れている様子は今のところないのだけど、並びでなんとなく紹介したくなった(笑)。

というのも、彼らがポストする映像を観る限り、現在のツアーの観客の盛り上がりが凄まじいから。もちろんジョン・フルシアンテが復帰して初めてのツアーであるばかりか、バンドのキャリアとして初のスタジアムツアーでもある。

フリーの活躍も目に付く。

ちなみに、元レッチリのジョシュ・クリングホッファーが、現在パール・ジャムのツアーに参加しているのも嬉しい。

話が逸れるが、レッチリの最新ツアーグッズは、フリーの奥さんがデザインしていてレッチリらしくて最高にカッコいい。日本からでもウェブで買えるようになっていたけど、すでにかなり売り切れている。
https://shop.redhotchilipeppers.com/

最高裁が50年以上も遡るような判決をしたことには、腹わたが煮え繰り返るような怒りを感じたけど、レイジ始め、彼らのようなバンドが少なくとも明確に反抗を表示してくれることで少しは救われる。また、彼らがここで強烈な反抗をしたのも、これまでも彼らがそれについて歌ってきたからだ。

個人的には、中絶の権利については、オリヴィア・ロドリゴリリー・アレンと”Fuck You”を歌ったのが最高だと思うが。
https://rockinon.com/blog/nakamura/203077

グラストンベリーでは、彼女の他に、ビリー・アイリッシュも、フィービー・ブリジャーズも、ロードも反抗を表明していた。

またビリーは、グラストンベリーでは、”Your Power”の前に、「この曲は、権力に対する概念を歌ったものであり、権力を使って人を傷付けてはいけない、それを忘れないで欲しいと歌ったものだ」と語っている。これが映像。
続けて、「今日はアメリカの女性の権利に関して、本当に本当に暗い日だ。これ以上もう考えられないから言葉にするしかない」と語っている。

また、つい最近終了したばかりのヨーロッパツアーのアコギのパフォーマンスの場面で、『ハピアー・ザン・エヴァー』の未発表曲である”TV”を初めて披露している。

そこで、女性の権利が奪われようとしている時に、セレブリティの離婚について騒いでいる場合かとアンバー・ハードとジョニー・デップの裁判の騒動を批判する内容の歌を歌っている。ビリーはいつだって誰より大人で正しいので感動するし、救われる。

ビリーは、フリーと同様にテキサス州で中絶が事実上の禁止となった時もテキサス州のフェスで怒りを示していた。
https://rockinon.com/blog/nakamura/200330

新世代と90年代の怒りの度合いが似ているところもなんとも興味深い。



ロッキング・オン最新号(2022年8月号)のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。

レイジ以外の90年代バンドも中絶禁止に猛烈反抗。グリーン・デイのビリー・ジョーは「ファック・アメリカ!  俺は市民権を放棄する」、パール・ジャムのエディ・ヴェダーは「中絶賛成じゃない男にはセックスさせるな」、レッチリのフリーは逆立ち(?!)。
中村明美の「ニューヨーク通信」の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする