実はちょっと前ですが、スティーヴン・スピルバーグの『リンカーン』がアメリカで公開になり、オバマ大統領の再選が決まったその直後の週末に観て来ました。
それで何が感動したかって、ダニエル・デイ=ルイスがスクリーンに現れた瞬間に、もうリンカーンが本当に蘇ったとしか思えなかったことです。もちろん、リンカーンの動いているところ観たことないのですが。
観たことあるのは、シカゴにある銅像とか、お札とか、限られた写真のみ。なので、リンカーンに観えたというのもおかしな話なのですが、でも、本当にリンカーンにしか観えなかったのです。
本当の演技力ってそういうものなのだと改めて実感しました。映画というのは、実際リアルな世界ではないのに、映画を観ている間はそれがリアルなものだと信じさせてしまう、そういう力があるわけで、デイ=ルイスの演技こそ正にそれだったのです。
しかも、デイ=ルイスが凄いのは、それを非常に静かな演技で観せてしまったこと。思いきり内省的だし、何より大統領の孤独を体現していたのだと思います。例えば、最近だったら、極端な逆は、メリル・ストリープの演じたサッチャー。あの演技は、物語とかなんとか全部なぎ倒してメリル・ストリープがとにかく、 笑っちゃうくらい前へ前へ出て来た印象ですが、そうじゃなくて、むしろ静かにそこに佇む姿こそが印象に残る演技だったのです。
また、『リンカーン』の映画全体として素晴らしいところは、とりわけ、オバマが当選したすぐ後に観ると、この映画全体がオバマ大統領へのメッセージなのでは、と思えてしまったりもするところです。政治とは、大統領とは、人々と交渉して物事を決断していくこととはどういうことなのかを描いていて、現代とあまりにリンクしているので、リンカーンを描きながらも、”今”の映画であることが何より素晴らしいと思いました。
『リンカーン』は、2時間半の映画なのに、私の観た劇場では1日に11回も上映していました。それなのに、金曜日、土曜日は即売りきれだったので、出遅れて日曜日の朝に観て来ました。『リンカーン』はレビューも良いし、大ヒットもしているし。ダニエル・デイ=ルイスのオスカーノミネーションは当然でしょう。もしかしたら獲る可能性もあります。もちろん作品賞も、監督も、助演のサリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズもノミネートされると思います。
日本の公開は、4月19日です。お楽しみに!
こちらで日本語の予告編が観れます。デイ=ルイスを観てみてください!
http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/
あ、そうだ。映画の始まりは戦争の映像で、それがもろ『プラベート・ライアン』のオープニングシーンを彷彿とさせるので、その瞬間にスピルヴァーグ映画だなあと思いました。