ブルース・スプリングスティーンの歴史的な南ア初にして『ハイ・ホープス』ツアー初日を観た!


ライブの直前に行われた記者会見で南アフリカで初めてライブを行うにあたりどんなライブにしたいのか?と訊かれ、「とにかくみんなに思いきり楽しんでもらえるような素晴らしいショーにしたい」と語っていたブルース・スプリングスティーン。

これだけのキャリアがあって、初めてライブをやる場所で一体どんなライブを披露してくれるのかと思いきや、本当にその言葉通り、会場を明るくしたままで、Special A.K.A.が1984年にリリースした”Free Nelson Mandela”のカバーで幕開け。思いきり快活に会場を盛り上げた。

記念すべき会場となったのは、ケープタウンのBellville Velodromeで、キャパは1万人。もちろんソールドアウトで3日間行われるのだが、1万人とは、スプリングスティーンにしては小さいので、その一体感も”親密”にすら感じられたのが印象的だった。

トム・モレロは、カメオ的な出演ではなくて、最初から最後まで、演奏という贅沢さ。前日のインスタグラムでは、ノートにびっちりと曲のリストを書き出して、「ツアーが始まるまでに中から外から覚えなくてはいけない曲、250曲」とコメントもしていた。

例えば、”The Ghost of Tom Joad”では、ボーカルを担当する場面もあり、思いきりギターソロを響かせる場面も何度もあったのだけど、あくまでトム・モレロでありながらも、しっかりとEストリート・バンドファミリーの一員にもなりきれるところが、さすが。アルバム『ハイ・ホープス』において、トム・モレロはミューズだとスプリングスティーンも語っていたが、バンドに新たな緊迫感を与えながらも、それがこれみよがしでないところが、トム・モレロの本当の才能だと思った。

隣りに座っていた南ア、ヨハネスブルグからの記者に、「こんなすごいライブ、スプリングスティーンのライブの中でも特別だよね? 特別だよね?」と何度も訊かれ、一応「そりゃ、そうだよ!」とは答えたものの、それがボスの素晴らしさで、いつどこで観ても、「このライブだけ特別だ」と思わせる力があるのだ。1曲目から最大の山場みたいな演奏で始まり、2曲も最大の山場、最後の最後まで、最大の山場な演奏なのである。それを3時間やって余裕の笑顔。というか、演奏しながらどんどん若返っているようにすら思えるのだ。前回のツアー同様、観客にビールをもらって一気飲みしたり、クラウドサーフでステージまで戻ったり、特別だったのは、観客の女の子にキスまでしていた! その時気付いたんだけど、今回は奥さんのPatti Scialfaがライブに参加していなかった(笑)。

”Born in The USA"に、”Born to Run"に、”Thunder Road”。これでもかこれでもかなヒット曲の応酬に、南アの観客も熱狂につぐ熱狂だった。南ア初のライブにして『ハイ・ホープス』ツアー初日については、これから発売される3月1日売りで詳しく掲載させていただきます。

ちなみに、スプリングスティーンのツアーの音源が、この南ア初日から初めてインターネットで買えるようになりました。ライブが終わってから48時間以内にアップされます。

大雪のニューヨークから直前にLAに脱出。フォスター・ザ・ピープルの取材をして、今年最重要アルバム誕生直前のメンバーに会い、記念すべきLAダウンタウンでのライブを目撃。そして、LAから26時間!真夏の南アでこちらも歴史的なライブを観せていただき、しかもその前にQ&Aまで!ボスが、なんと私の目の前に座っていました。これからニューヨークに戻ります。

演奏している写真はリハーサル中です。

セットリスト
"Free Nelson Mandela"
"Badlands"
"Death to My Hometown"
"Out in the Street
"High Hopes"
"Spirit in the Night"
"Hungry Heart"
The River"
"Heaven's Wall"
"Atlantic City"
"Johnny 99"
"Pay Me My Money Down"
"American Skin (41 Shots)"
"Because the Night"
"Darlington County"
"Shackled and Drawn"
"Waitin' on a Sunny Day"
"The Rising"
"The Ghost of Tom Joad"
"Land of Hope and Dreams"

アンコール
"We Are Alive"
"Born in the U.S.A."
"Born to Run"
"Dancing in the Dark"
"Tenth Avenue Freeze-out"
"Shout"
"Thunder Road"
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