ビョークのVR映像展示「ビョーク・デジタル」について、昨日書ききれなかったことを追記。
展示は以下のように3つのパートに分かれているのだが、
1.VRコンテンツ(VR映像体験コーナー)
2.Biophilia(アルバム『バイオフィリア』とともに生まれたアプリの体験コーナー)
3.Cinema(MVコレクション。7.1chにリマスターした映像音響で体感)
Biophiliaというアプリを体験できるのも面白かった。音楽理論や科学、テクノロジー、物理を総合的に、もっと楽しく探求できるように、と開発したアプリは、実際に北欧の学校のカリキュラムとして使われているという。ビョークは昔から学校の音楽の授業に疑問を呈していたが、口だけじゃなく本当に作ってしまうところがすごい。
ちなみにVRコンテンツは3曲。
28日に公開収録された“クイックサンド”は、残念ながら展示されていなかった。まだ完成ではなく、これからも手を加えられるのだそうだ。
「360度VR映像」を「リアルタイム・ストリーミング配信する」という世界初の試みが、今回のテーマだったんだろう。http://ro69.jp/blog/ro69plus/145019
“ノットゲット”のVR映像の迫力はすごかったが(これで『進撃の巨人』とか観たら、絶対ぶっ倒れるか、VR装置をつけてること忘れて走り出して転びそう)、この作品もこれから進化していくのだという。
ビョークは、ひとつのテーマに興味を思ったら、パッケージとして表現し、ライヴで演奏して終わり――にするのではなく、どこまでも深掘りし、様々な形で進化・発展させていく。
失恋というプライヴェートな悲しみを、ギリシア悲劇に遡るような普遍的かつ根源的な人間の感情だと気づいた彼女は、『ヴァルニキュラ』からさらに『ヴァルニキュラ-ストリングス』へと発展させ、その収録曲でVR映像を作り続けている。7月13日にはライヴ・アルバム『ヴァルニキュラ:ライヴ』もリリースされる。
その喪失がいかに大きかったか、というのは簡単だが、そうではなくむしろ、その「感情の大きさ」に着目し、分析し、人類はそれとどう付き合うのか、未来にどう伝えるのか、を音楽で実験しているのだろう。
ビヨンセやカニエやイーノの表現にも、同じものを感じる。リアルなアーティストとはそういうものなのだと思う。
余談だが、昔『ホモジェニック』がリリースされた後、ロンドンでビョークにインタヴューしたことがあるが、ブライアン・イーノの話題になり、
「今朝、このホテルのプールで泳いでたらイーノに会ったわ」と彼女は言っていた。
「え!私もここに来る時に成田空港でイーノを見かけました。で、その前日にもなぜか(代官山で)ばったり会って」と、彼の神出鬼没さを笑ったことを思い出した。
8/1発売のロッキング・オンでは、屋久島↔NYによる電話インタヴューも掲載。ちょっと先だがこちらもお楽しみに!
http://ro69.jp/blog/nakamura/144945
『ヴァルニキュラ』についてより深く語られている、『ヴァルニキュラ-ストリングス』インタヴューはこちら↓(井上貴子)
“Stonemilker”360度VR映像
“Mouth Mantra”のミュージック・ビデオ