1997年にオフ・ブロードウェイで初上演して話題となり(デヴィッド・ボウイがグラミー賞をすっぽかして参戦したり、マドンナが楽曲の権利使用を熱望したり)、2001年の映画化でさらに世界中を巻き込んだ『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。
その脚本を作り、オリジナル舞台と映画でヘドウィグを演じた生みの親、ジョン・キャメロン・ミッチェルが、なんと日本で初公演することが決まった‼‼!
LGBTをテーマにした作品は最近では少なくないが、20年前、ここまでシリアスにその本質に切り込みながらも、ユーモア溢れるエンターティンメントとして作り上げたことは、本当に画期的だった。
しかも社会や政治の問題と、個人のアイデンティティの問題(愛とエゴと孤独といった感情も含めて)を、「壁」(ヘドウィグは、ベルリンから自由を求めてアメリカに来たという設定)や「1インチの余分な異物」(性転換手術に失敗して股間に残った1インチ)というメタファーや神話的物語を使って、最高の楽曲とともにエモーショナルに表現したところが素晴らしい。(あらすじは下記参照)
ロック・ミュージカルの金字塔とも言われる本作だが、ロジャー・ウォーターズがライヴでステージ・セットの壁にトランプの顔を映して『ザ・ウォール』を演奏するように、この『ヘドウィグ』も今こそもう一度(まだの方はもちろんぜひ一度は)観るべき、そして一緒に歌うべき作品だろう。
映画公開時、プロモーション来日のJ.C.ミッチェルにインタヴューしたことがある。
「アングリー・インチ」という奇抜なアイディアはどこから生れ、また何を象徴しているんですか?
と第一声で訊いたところ、素敵な答えが返ってきた。
「それが僕にもわからなくて……気がついたらそこにあったんだ。
アングリー・インチは、ヘドウィグに与えられたすべてなんだよ。あの、たったの1インチがね。
その与えられた運命によって、自分はどう生きていくのか――それが人生を決めるんだ。だから、サイズは関係ないっていう(笑)」
さらに、この物語をロック・ミュージカルという形式で描こうと思った理由は? という質問には
日本でもあなたの舞台が観たいと言ったら、彼はそれぞれの国でそれぞれのヘドウィグを演じてほしい、と語っていた。「本物のロック・ミュージカルがやりたかったんだ。
正真正銘のストーリーと、正真正銘のロックンロールっていう、そのふたつを一緒に描きたかった。
もともと舞台をやっていて、ブロードウェイに少し出てたこともあるんだけど、本物のロック・ミュージカルってなかったんだよね。それっぽいものはあっても、それはライヴから受けた衝撃とはまったく別のものっていうか」
そして実際日本では、
三上博史(2004年、2005年@PARCO劇場他)、
山本耕史(2007年、2008年、2009年 全編英語詞の歌唱)、
森山未來(2012年、映画監督・大根仁演出)
がそれぞれに独創的なヘドウィグを生み出してきた。
しかし、2014年にリバイバル作品としてブロードウェイに進出しトニー賞4部門を受賞、さらに2015年公演では、ジョン・キャメロン・ミッチェル本人が「オリジナル」ヘドウィグ登場しトニー賞名誉賞を受賞した。それだけに今、本物が観れることはとても嬉しい。
ヘドウィグの公私共にパートナーでもあるイツァーク役は2007年山本耕史主演公演で演じた中村 中、演出は「銀河英雄伝説」シリーズなどを手がける演出家・ヨリコ ジュン、音楽監督には2012年森山未來主演公演に引続き、岩崎太整というコラボレーションも楽しみだ。
また、12月1日にはジョン・キャメロン・ミッチェル監督の最新作映画『How to Talk to Girls at Parties』(原題)公開も決定!
1977年、ロンドン。パーティで出会い、パンクで結ばれた2人は、逃避行を決めるが──。という、エル・ファニング主役の、パンク少年 meets 宇宙人ガールな物語なんて最高!でこちらも期待。(井上貴子)
原作:ニール・ゲイマン「コララインとボタンの魔女」
出演:エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン
HEDWIG AND THE ANGRY INCH
ブロードウェイミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」特別公演
【東京公演】
会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)
日程:10月14日(土)12:00開場/13:00開演 18:00開場/19:00開演
10月15日(日)15:00開場/16:00開演 3回公演 ※未就学児入場不可
料金:S席 9,500円/A席 8,500円(全席指定・税込)
発売日:7月29日 午前10:00より発売開始
問い合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
【大阪公演】
会場:NHK大阪ホール
日程:10月17日(火) 18:30開場/19:00開演 ※未就学児入場不可
料金:9,800円 (全席指定・税込)
発売日:7月29日 午前10:00より発売開始
お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00-18:00)
詳細はこちら→www.hedwig2017.jp
【あらすじ】
少年ハンセルは、自由の国アメリカに渡りロックスターになるのが夢だった。
彼は幼少時に母親からプラトンの魅惑的な「愛の起源」の物語を聞かされる。
以来、彼は自分の“カタワレ”を見つけようと心に決める。
ある日、彼は偶然一人の男と出逢う。その男に見初められ、彼と結婚の道を選んだハンセルに待ち構えていたのは、アメリカへ渡るための“性転換手術”だった。
しかし、手術を受けたハンセルの股間には手術ミスで「怒りの1インチ(アングリーインチ)」が残ってしまう。
その後、ヘドウィグを名乗り渡米を果すも離婚、ベビーシッターなどをして日々の糧を得つつロックバンドを組むも、なかなか成功への道が見えず生活に追われていた毎日だった。
やがて17歳の少年トミーに出逢い、愛情を注ぐようになるヘドウィグだったが、トミーはヘドウィグの曲を盗んでビルボードNo.1のロックスターに上り詰める。最愛の人に裏切られたヘドウィグは自らのバンド「アングリーインチ」を率いて、ストーカーのようにトミーの全米コンサート会場を追い、スタジアム脇の冴えない会場で巡業する。果たして、自分の魂である歌を取り戻し、捜し求めていた“カタワレ(=愛)”を見つけることができるのか…?