今年5月のユーロビジョン・ソング・コンテストにイタリア代表で出場し、ぶっちぎりの優勝をさらったマネスキン。
70sハード・ロックの妖艶でグラマラスな様式美をビジュアルの柱としつつ、追加の調味料として、ひたすらキャッチーなユーロ・シンセ・ポップの中毒性や、90sラップ・ロックのアゲアゲなアッパー感も注入。赤唐辛子がめっちゃ多めなペペロンチーノのごとく、スパイシーに和えられたそのサウンドは、コロナ禍でどんより停滞しがちだった音楽チャートの「救世主」的に大ブレイク。
優勝ソングの“ジッティ・エ・ブオーニ”に続き、4年前に発表されていた“ベギン”までもがSpotifyで現象的な大ヒットに!……という話はすでに本誌でもレポート済みだけど、そのマネスキンが8月6日、最新シングル“アイ・ワナ・ビー・ユア・スレイヴ”のニュー・バージョンをリリースした。
新たにフィーチャリングされた客演はイギー・ポップ!である。《オレはキミの奴隷になりたい/オレはキミの主人になりたい――》というオープニングの歌詞からもわかるとおり、本曲のテーマは「セクシュアリティの多様なかたち」だ。時にはキワどい言葉(《キミの大人のおもちゃになりたい/キミの教師になりたい》)や、相反するイメージ(《キミの罪になりたい/キミの宣教師になりたい》)もちりばめながら、ダミアーノの歌声は、愛する者へのあらゆる欲望をすべてひっくるめて肯定していく――たしかに不完全だし、罪深くもある。でも、だからこそ、僕らは人間なんだろ?、と。
そして今回のバージョンでは、楽曲の肝とも言える中盤のコーラスをイギー・ポップが担当。《オレは罪の贖あがないを探し求める悪魔/罪の贖あがないを探し求める弁護士――》とまくしたてる圧巻のボーカルは、「最初からイギー用に書いた歌詞だったのでは!?」と思えるほどのズッパマリ感で、ただでさえキワどい楽曲の世界観をさらなる熱狂へと引き上げていく。夢のコラボ(ちなみにイギーとダミアーノの年齢差は「52歳」!)が織り成す最強のラブ・アンセム、ここに爆誕!である。 (内瀬戸久司)
マネスキン&イギー・ポップの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。