ノルウェーのSSW:オーロラ。約3年ぶりの新作『ザ・ゴッズ・ウィー・キャン・タッチ』は、壮大なモチーフをもとに紡がれる、約束された飛躍への架け橋となるか?!

ノルウェーのSSW:オーロラ。約3年ぶりの新作『ザ・ゴッズ・ウィー・キャン・タッチ』は、壮大なモチーフをもとに紡がれる、約束された飛躍への架け橋となるか?! - rockin'on 2022年2月号 中面rockin'on 2022年2月号 中面

寒色から暖色へ、硬質な冷たさから柔らかなぬくもりへ、エレクトロニックからオーガニックへ――。約3年ぶりのアルバム『ザ・ゴッズ・ウィー・キャン・タッチ』を完成させたオーロラが、明らかに従来とは趣を異にするサウンドをまとって戻ってくる。

10年前のデビュー以来、氷と山と水が織りなす故郷の風景にも通ずる雄大で幻想的なエレクトロ・ポップに、自身の音楽的アイデンティティを確立してきた彼女。ここにきて新たな世界に踏み出すきっかけをこのノルウェー人シンガー・ソングライターに与えたのは、ギリシャ神話だった。

神と言ってもギリシャ神話の神々は、決して完璧な存在ではない。まさにタイトルに掲げた“触れることができる神々”であり、欲望に正直で、色恋にのぼせて分別を失い、憎悪や嫉妬に燃え、奸計を巡らせ、権力を争う。ならば、いい意味で恥を知らない神々に目を向けることで、社会が押し付ける恥の意識で自己を否定し抑圧してしまう、人間のおかしさを浮き彫りにできるのではないのか――。本作は、そんな思いから形作られたアルバムなのだという。

よってオーロラは、例えば“イグジスト・フォー・ラヴ”は愛と美を司るアフロディーテ、“ヒーゼンズ”は冥府の女王ペルセポネ、“ディス・クッド・ビー・ア・ドリーム”は眠りの神モルフェウス、“ギヴィング・イン・トゥ・ザ・ラヴ”は巨人神プロメテウス……といった具合に、異なる神に因んだ15の曲を書き上げて、本作をレコーディング。

デビュー当初から彼女に寄り添う、地元ベルゲン出身のミュージシャン仲間と引き続きコラボし、一同が目指したのはオリュンポスの山か? 地中海を取り巻く国々、さらには中南米にもインスピレーションを求めて、アコギやチェロやバンドネオン、そして色とりどりのパーカッションで、遊び心溢れるロマンティックな音を奏でる。

オーロラのあの透き通った歌声からそれは思いがけないセンシュアリティを引き出し、奔放不羈な神々に啓示を受けた彼女自身の中で何かが解き放たれていくプロセスを、まざまざと実感できるだろう。 (新谷洋子)



オーロラの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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