2023年3月、ビョークの来日公演が決定した。それも、今回は特に見逃せない特別なものになりそうだ。というのも、2つの形式でおこなわれるというのだ。
ひとつは、ビョークと32人のオーケストラだけで構成されるという『orchestral(オーケストラル)』。もうひとつは、アルゼンチンの映画監督であるルクレシア・マルテルとビョークが監督し、ジェイムス・メリーが共同演出、さらにステージデザイナーのキアラ・スティーヴンソンが環境デザインを、メディアアーティストのトバイアス・グレムラーがデジタルビジュアルデザインを担当するという『cornucopia(コーニュコピア)』。後者はアルバム『ユートピア』をコンセプトとし、2019年春にニューヨークで披露され大絶賛されたステージだ。その際は菌類を模した舞台美術のなか、合唱団やハープ、エレクトロニクスとパーカッションを従えた特別な編成でのアンサンブルとなったという。
ビョークにしかあり得ない総合芸術が、ここ日本で実現することに興奮せずにはいられない。『orchestral』は東京ガーデンシアターと神戸ワールド記念ホールでそれぞれ1公演、『cornucopia』は東京ガーデンシアターで2公演開催される予定なので、公演情報をぜひチェックしていただきたい。
さらに、この秋には新作『フォソーラ』のリリースもアナウンスされている。すでに出ている情報には、ハードコアテクノの一種であるガバの激しいサウンドに影響されていること、バスクラリネットの六重奏がフィーチャーされていること、R&Bと室内楽を華麗に融合し高く評価されてきたサーペントウィズフィートが参加していること、キノコがテーマになっていることがあるが、これだけではいったいどんなアルバムなのか誰も想像できないだろう。
2018年に亡くなった環境活動家であった母親のために書かれた曲があるという話は、少しヒントになるかもしれない。ビョークがずっとテーマにしてきた「自然」が、やはり重要なモチーフになってそうだ。いずれにせよ確かなのは、これから様々な形でビョークが新しい芸術をわたしたちに届けてくれるということだ。全身で味わいたい。 (木津毅)
ビョークの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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