昨年のショウケース来日から約1年、待望の初来日ツアーを行ったコナン・グレイのステージに改めて感じたのは、彼が今求められるポップスターの条件を、須らく兼ね備えた人だということだった。
例えばそれは、キラキラと映えるカリスマでありながら、謙虚で地に足がついていること。ファンが仰ぎ崇めるアイコンではなく、ファンと同じ地表に立って連帯しようとしていること。内省的で傷つきやすいZ世代のメンタリティを掬い上げ、誰ひとり阻害しないコミュニティを作ろうとしていること……かのハリー・スタイルズのモットーが「人に優しく」であるのは有名な話だが、共感と抱擁のメッセージに満ちたコナンのステージにも、同様の優しさ(Kindness)が満ちていたのだ。
パシフィコ横浜を埋めたファンの前に颯爽と登場したコナンは、スパンコールをちりばめたベスト、フレアボトム、厚底ブーツというグラマラスな出で立ち。しかし確かな歌唱力とショウマンシップで歌われるのは、どこまでも等身大の悩みや挫折の物語だったりする。言わば、デヴィッド・ボウイとテイラー・スウィフトのDNAを受け継いだハイブリッドがコナン・グレイであり、世界を舞台に活躍する数少ない日系人スターのひとりでもある。
「シンジツハ、イツモヒトツ!」と『名探偵コナン』の決め台詞を披露したりとお茶目な面も魅力だし、「隣の友達とハグして! 僕も友達になりたいからエアハグを送るよ」と始まった“ベスト・フレンド”や、「過去の経験や痛みは、必ずしも人生に重くのしかかるわけじゃない。そのことを皆に伝えたい」曲だという“ファミリー・ライン”など、その人懐っこさの中に包容力を兼ね備えた歌とパフォーマンスは、つくづく新世代的だった。
オーディエンスもまた新世代だった。コナンを驚かせたほどの大合唱や、事前に数千人の観客に根回ししてサプライズを演出する企画力も含めて、素晴らしいファンダムが彼と共に育っているのを感じる。そんなファンがコナンにプレゼントした、赤いライトで会場が包まれたラストの“メモリーズ”は、この日の温もりを象徴する一曲だったんじゃないだろうか。 (粉川しの)
コナン・グレイの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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