ロッキング・オン最新号、表紙巻頭はハリー・スタイルズ! アイドルも超え、ロックスターも超えて、ポストコロナ時代のポップミュージックを体現する完璧なスーパーアイコンに迫る!

rockin'on 2023年5月号 中面

ポップスターが時代を映す鏡であるとするならば、ハリー・スタイルズほどその役割をパーフェクトに果たしている存在は他にない。実際、ハリーが映し出す時代の景色は驚くほど多面的で、その多面性によって2020年代を正しく体現するアイコンだ。

“アズ・イット・ワズ”が2022年に世界で最も聴かれた曲となり、グラミーを制した彼が、名実共に世界最高峰のポップスターであるのは言うまでもない。同時に『ハリーズ・ハウス』が紛うことなきバンドアルバムだったように、彼は近年のギターミュージック復活を象徴するロックスターでもある。さらにはブロックバスターからアート系まで幅広く出演する映画スターであり、ドレスやパールを身につけてファッション誌の表紙を飾るアイコンであり、LGBTQコミュニティをサポートし、女性が半数を占めるバンドと共に世界を回り、ジェンダー平等を行動で示してきた人でもある。

そんな彼の様々なレプリゼンテーションを介して、私たちは「今」を理解してきた。私たちはどんな今を生きているのか、あるいは生きたいと願っているのか。それを教えてくれるのがハリーなのだ。

ただし、ハリーがかくも包括的な存在になったのはごく最近のことだ。ワン・ダイレクションの時代には破格の人気を誇ったにも拘らず、所詮ボーイバンドとして区別され、狭いジャンルに押し込められた。6年前、ギターを手に取りソロキャリアを歩み始めた際には、脱アイドルの気負いから、敢えてトレンドに逆張りしたと揶揄されもした。そう、些細な差でカテゴライズし、細分化し、違いばかりを気にして分かり合えなかったのはさして昔の話ではない。

しかし、たった数年で価値観は大きく変わった。カテゴリーの壁を打ち壊し、違いを面白がり、緩やかに他者と繋がっていく機運がポップミュージックに、私たちのメンタリティに急速に浸透していった。そして気付いた時には、その最前線にハリー・スタイルズが立っていた。

人種やイデオロギーの対立やパンデミック、気候クライシス、戦争……と、今なお幾つもの困難が立ちはだかる2020年代にあって、「人に優しく」と訴えるハリー・スタイルズの柔らかなメッセージは、いっそラディカルに響く。時代を変えるポップスターは、いつだって少しラディカルなものなのだ。(粉川しの)




ハリー・スタイルズの総力特集は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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