現在発売中のロッキング・オン7月号では、キング・クルールの新作『スペース・ヘヴィー』ロングレビューを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。
文=粉川しの
キング・クルールの約3年ぶり4作目のオリジナルアルバム、『スペース・ヘヴィー』がリリースされる。同作からの先行シングル“シーフォース”を聴いて最初に感じたのは、意外にも軽やかさであり、明瞭さだった。地表にめり込むヘヴィベースや暗闇を切り裂くギターやサックス、マーティン・ハネット風に残像を残して揺らぐドラムス、水に一雫垂れる墨のようなポエトリーと声etc.、アーチー・マーシャルにとって宿命にも思えたサウンドの重石が、ここではひととき彼の肩から降ろされている。
開放的な空間を回遊するユーフォリックな旋律、パタパタとその周りを飛び跳ねるリズムには驚かされるし、鼻歌のように素朴なメロディも、素朴だからこそアーチーのソングライターとしての成熟を直に感じる優れもの。バンドはカモメが鳴く長閑な海辺で演奏し、アーチーの夢の中で愛らしい二頭のゴールデン・レトリバーが戯れている、そんな同曲のMVも未だかつてなく肩の力が抜けたユーモアを感じさせる仕上がりだ。
ちなみに“シーフォース”はレコーディング当時4歳だった彼の娘、マリナの名前が共作者としてクレジットされている。そう、アンファンテリブルとして鮮烈なデビューを果たした彼は、今や一児の父となった。そうした前提を踏まえて同曲の歌詞を読むと、《僕らは座って死にゆく惑星を眺める。気にせず微笑むんだ。さあ、一緒にショッピングセンターに行こう。僕らの愛はこの宇宙(空間)を溶かしていく》と、アーチーが娘に語りかけている様が浮かび上がってくるはずだ。(以下、本誌記事へ続く)
キング・クルールの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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