30年前に“宝物”と書いておいた箱を開けるかのような感動を味わわせてくれたのが『ドゥーキー』30周年記念ボックスだった。缶バッジやステッカー、バイナルマグネットといったオモチャ類や分厚いブックレット、そして10曲の初CD化を含む全65曲中37曲が未発表音源という大盤振る舞いっぷりに狂喜しているところに投下されたのが、新作『セイヴァーズ』1月19日発売のニュースだった。
10月19日にラスべガスのフリーモント・カントリー・クラブ(キャパ800人!)で行った『ドゥーキー』全曲、アルバム同曲順でプレイするスペシャルライブでは、全曲をやった後に新曲“アメリカン・ドリーム・イズ・キリング・ミー”を披露した。MVでは入念なゾンビメイクを施したスタイルで《アメリカンドリームが自分を殺している》と激しく歌うのが“救世主”と名付けられたアルバムの一番最後に作られた曲であり、出来上がったとたん、これがファーストシングルだ、と決めたそうだ。『セイヴァーズ』のエッセンスが詰まっているということなのだろう。
それは前回の大統領選挙のときから反トランプを明確に宣言し、トランプを支持するんならオレたちの音楽を聴かないでくれとか、最高裁判所が「中絶は憲法で認められた女性の権利だ」とする49年前の判断を覆したことを激しく非難するなど、一貫して『アメリカン・イディオット』を始めとした作品で訴えてきた理想や主張の延長線上に今作もあることを示している。
アルバムジャケットは70年代の北アイルランド、ベルファストでの紛争時の写真をモチーフとしたもので、パンクが単にサウンドスタイルやポーズ、ファッションの問題じゃなく、自分たちの主張にとって“最上の武器”のひとつなのだ、という宣言がなされているかのようだ。もちろんそれは『ドゥーキー』時代から持ち続けているものであり、ビリー・ジョー・アームストロング、マイク・ダーント、トレ・クールの3人が変わることなくライブで、新作で、それをぶつけてくれてる姿に感動させられる。 (大鷹俊一)
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