【インタビュー】リトル・シムズ、6枚目となる新作『ロータス』に込めた想いをロッキング・オンに明かす

●ロンドンのフェスティバル「Meltdown 2025」のキュレーターに任命されたそうですね。ザ・ストリーツをはじめ、すでに多様なラインナップが発表されていますが、キュレーションにはどのような想いを込めましたか?

「とにかく、自分が『今の音楽はこうだ!』と感じているアーティストを一堂に集結させて、特大のメルティングポットにしたかった。本当にさまざまなスタイルがあって、テクスチャーがあって、開催期間も11日間もあるから日によって違うものにしたかった。それに、個人的なフェイバリットや、私が本当にただのファンっていう人たちに集まってもらいたかったっていう。みんなが参加すると言ってくれて本当に感謝しているし、今年の夏のハイライトになることは間違いない。ものすごく楽しみで、あとは自分のオーケストラとの共演もこれまで一度もやったことがないから、きっと素晴らしいものになると思うし。それも本当に楽しみだね」

●俳優のほか、MIU MIUのモデルとしても活躍したりと、多彩な仕事をされています。そういった活動は、音楽表現にも何かインスピレーションを与えていますか?

「私が何に一番情熱を持っているかというと、それはストーリーテリングだと思っていて、それが音楽を通じてであれ、演技であれ、あるいは、ファッションショーで歩くときも着ている服のストーリーを語っていると思ってるんだよね。演技だったら映画やテレビのストーリーがある。そして音楽では自分のストーリーや経験を語っていて、だから自分の本当の情熱はそこで、そのストーリーに誰かが共感してくれることを願っていて。それがいろんな活動に共通しているものだと思う。誰もが自分のストーリーを持っているし、そのどれもが大切で、ストーリーを分かち合えば合うほど繋がれる。そうやって人と人を繋げたり、人と人を近づけるために私たちがいると思うし、そこに対する情熱はずっと持っていると思う」

●あなたは、いちアーティストを超えた象徴的な存在としてますます影響力を高めていますが、黒人女性のカルチャーアイコンとして、今の世の中にどのような変革を起こしていきたいと考えているのでしょうか?

「まずは、誰かにインスピレーションを与えられたら嬉しい。どんな形であっても自分なりに音楽の世界に貢献していきたいと思っているから。それから若い人たちに対する想いは強くあって、いろんなチャンスを与えられる存在になりたいし、新たな視点や考え方を示していけるようになれたらいい。自分が成長する過程でユースセンター(註:若者向けに、さまざまな文化活動を体験させてくれる施設)に出会ったこともすごく恵まれていたと思っていて。そこで自分に与えられた才能を磨くことができて、自己表現する場所があって、間違いなくそれが自分の人生を変えたから、今度は自分がユースのためにできることをやりたいと思ってる。なぜなら、ユースが未来のリーダーたちだから。それからあとは、自分自身の目的やアーティストとしての願望も叶えていきたい。私はアーティスト。アートを作るのがアーティストだから、それが音楽であれ、写真、ファッション、映画、テレビであれ、どんな方法であっても作り続けていくことが大事だと思う。誠実にね」

●近年アメリカでは、ラップシーンのメインストリームに多数の女性ラッパーが浮上してきました。イギリスのラップシーンは男性優位のグライム/ドリル文化が根強く、女性MCが声を上げる場が限られているようにも見えますが、実際はいかがでしょうか?

「イギリスのラップ界隈にも多くの女性が出てきていると思うし、みんな素晴らしくて、今だったらChy Cartierなんかは要注目で、彼女ならきっとさらなる高みに行けると思う。それに私も自分なりに頑張ってるし(笑)。もちろんこれまでのラップシーンでは男性と女性の割合はアンバランスだったけど、でも素晴らしいアートを作ってサウンドを前に進めていく限りは男でも女でも誰でも、イギリス全体として考えて、それぞれが自分の役割を果たしていけばいいし、自分もそこに関われることを嬉しく思う。みんなのことを誇りに思うし、みんな最高だよ」


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