トミー・ラモーン亡くなる

トミー・ラモーン亡くなる

オリジナル・メンバーで唯一の存命者だったトミー・ラモーンが、胆管がんのためなくなった。62歳だった。本名はトマス・アーデライ。
シンプルでストレートなロックンロールという表現を僕達は良く使う。そして多くの人はその言葉を象徴するバンドとして、ラモーンズを思い浮かべる。
しかし、シンプルでストレートなロックンロールがとても難しいことは、ラモーンズのようなバンドはラモーンズ以外、存在しないことから明らかだ。
激しく早いギターリフで、3コードのシンプルな8ビートのロックンロールをプレイする、誰もがかっこいいと思い、誰もがやってみたいスタイルだ。
しかし誰もラモーンズになれなかったのは、シンプルであればあるほど、優れたメロディや、、際立ったリフが要求されるからだ。それがないとスタイルは誰でも真似ることが出来るので、オリジナリティーを作ることは難しい。ラモーンズはシンプルでストレートなロックンロールをやり続けたから偉大なのではなく、偉大なシンプルでストレートなロックンロールをやり続けたから素晴らしいのだ。
そして、これは矛盾する言い方になってしまうかもしれないが、あのラモーンズのスタイルが、不可避的な必然に裏打ちされたものであることが、ラモーンズの凄さだ。つまり、シンプルでストレートなロックンロールをひたすらやり続けたこと、音楽的スタイルだけでなく、ファッションなどのトータルな世界観が、全く揺らがなかったことが、彼らを常に新しいものとして存在させていたのが凄い。
ジョン・ライドンにしろ、クラッシュにしろ、優れたパンクアーティストは、すぐに音楽的にも、ファッション・スタイルも、パンク的なものを乗り越えていった。それを僕達はとてもパンクな姿勢と受けとめた。ラモーンズは変わらなかった。それでも新しかった。まるで古典芸能のようにロックンロールを演奏しながら、いつも最新型だった。
それは彼らにとってロックンロールは趣味ではなく、不可避的に選びとらざるを得ない宿命だったからだ。恋人は選ぶことができるが、親は選ぶことは出来ない。ラモーンズのメンバーが、全てラモーンを名乗るのは、そのことを彼らが知っているからだと僕は思っている。
ご冥福をお祈りします。
今朝の朝日新聞。
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