日経ライブレポート「エリカ・バドゥ」

ステージに登場した時の圧倒的な存在感、歌い出した時の声の異次元的な迫力、やはりエリカ・バドゥは別格だった。豊洲のライヴハウスで開催されたイベントのトリに登場したエリカ・バドゥは、ほぼ2時間近い単独公演並みのヴォリュームのステージを展開してくれた。

1997年に発売されたデビュー・アルバム「バドゥイズム」が全米2位、そしてグラミー受賞という快挙をなし遂げ、それ以降一貫してブラック・ミュージック・シーンのトップを走り続けているアーティストだ。ジャズやヒップホップの方法論を大胆に導入したネオ・ソウルと呼ばれるスタイルを代表するアーティストとして高い評価を得ている。常に革新的であろうとする姿勢はデビュー以来変わらず、社会的な活動にも積極的に参加している。歌詞もそうした彼女らしい深い内容を持ち、そこに共感するファンも多い。

僕は個人的にもとても好きなアーティストで、来日のたびにステージを観ているのだが、毎回大きな感動と驚きを与えてくれる。今回も素晴らしいライヴだった。現在、彼女は「バドゥイズム」発売20周年のツアーで全世界をまわっている。それだけにライヴの完成度は高く、セットリストもキャリアを包括するものになっていた。お客さんも一緒に歌って楽しそうだった。

彼女の音楽の魅力は、ミクロの単位まで作り込まれた緻密さと、それをソウル・ミュージックのダイナミズムへと昇華させる彼女のエモーショナルなヴォーカルの力、その合体にある。今回もその奇跡の合体を体験できる素晴らしいステージだった。
7日、豊洲PIT(ソウルキャンプ2017)。

(2017年10月24日 日本経済新聞夕刊掲載)
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