日経ライブレポート「ケイティ・ペリー」

ドラマチックなオープニング映像が流れた後、客席に張り出したセカンドステージにケイティ・ペリーがせり上がってくる。かなり派手なスタートだが、そのテンションでほぼ全編走り抜けてしまう。豪華なエンターテインメントショーといえる内容だった。

そんな楽しいステージを見ながら一番強く思ったのは、とても真面目なステージであるということ。1曲ごとにセットや演出が変わるのだが、どの曲の演出もダンス、照明、セット、映像がその曲の世界観をしっかりお客に伝えるように作り込まれている。

例えば、最新作「ウィットネス」のリードトラックとなった「チェーン・トゥ・ザ・リズム」では高度化された消費社会に対する批判的なイメージが徹底的に視覚化されていく。「すごく快適よね、安全な幻想の中で暮らすって。すごく快適よね、面倒なことは目に入らないから」という歌詞どおりの、幻想の消費イメージ、その中で疎外されていく自分たちが映像やダンスなどで表現されていく。

私を食べさせてあげるというセクシーな歌詞の「ボナペティ」では巨大な食虫花がステージに登場、セクシーでダークな世界観がユーモアたっぷりに展開される。どれも完成度の高い演出で観客を飽きさせない。そして曲のメッセージを的確に表現している。

自分の曲のメッセージを真面目に伝え、誠実なエンターテインメントとして全力で表現していく、まさにケイティ・ペリーらしいステージだった。しかも、どの演出も映像に頼ることなく、ダンサーの肉体、優れた造形のセット、そして歌の力によって作りあげられていることが素晴らしかった。
3月27日、さいたまスーパーアリーナ。

(2018年4月13日 日本経済新聞夕刊掲載)
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