日経ライブレポート「ルーファス・ウェインライト」

ステージ上で口紅を塗り、ハイヒールに履き替えて「ゲイ・ミサイア」を歌うパフォーマンスに、僕は昔、圧倒されたことがある。今回のステージは2部構成で、第2部ではモコモコの白いガウンを着て登場して客席を沸かせていた。日本の桜へのオマージュが込められた衣装らしいが、彼らしい演出が印象的だった。

彼はいつもどこか世界に対しての馴染めなさを表現してきたように思える。それは自らのセクシャリティーだけでなく、もっと人は本来孤独であるという普遍的な感覚に近いものだ。その馴染めない思いが、彼の歌の美しさを生み出しているように僕は思える。それを強く感じることのできるステージだった。

彼のキャリア20周年を記念するライブで、評価も人気も高い初期の2作の曲を歌うスペシャルな夜となった。圧倒的な歌唱力は言うまでもないが、バンドの演奏が素晴らしく過去の名曲が2019年にアップデートされ、ファンは大満足だったのではないか。ジョニ・ミッチェルのカバーが個人的には嬉しかった。第1部はトークも多いカジュアルな雰囲気で進み、第2部はほとんどしゃべらず、歌と曲の力で圧倒するドラマチックな構成だった。歌とミュージシャンの肉体だけが作り上げていくオーガニックな音世界で、だからこそ曲のパワーが伝わってくるショーだった。

アンコールのラストはビートルズの“アクロス・ザ・ユニバース”のカバー。この曲の歌詞にある「何も僕の世界は変えられない」というメッセージは、彼の音楽の姿勢そのものを象徴しているといえる。20年の時間が経過しても輝き続ける彼の作品の力を感じることができた。

3月28日、東京国際フォーラム。
(2019年4月10日 日本経済新聞夕刊掲載)
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