日経ライブレポート「サザンオールスターズ」

今回のドーム・ツアーに先行する形で発表された4曲入りのシングルに、現在の桑田佳祐のサザン復活への覚悟のようなものを感じた。『ピースとハイライト』は「教科書は現代史をやる前に時間切れ」という、とても生々しい社会的メッセージを含む歌詞の曲だし、『栄光の男』は頑張ろうという歌詞の氾濫するJポップ・シーン批判ともいえる、頑張っても報われない人生こそを引き受けようという重い認識の歌だ。

これまで桑田佳祐がサザンで歌って来たものとは明らかに違う歌詞の世界だ。しかしメロディーは王道サザン節というか、とてもポップで瑞々しいものになっている。このシングルを聴いただけで、今回の5年ぶりのサザン活動再開が桑田佳祐にとって大きな決意と覚悟に基づくものだということを僕は感じざるを得なかった。そして、その思いはツアー・ファイナルの宮城スタジアムを観て、より強くなった。

3時間10分のステージは、サザン史上最高のエンターテインメントともいえる代表曲の連続で、聴きたい曲が次々と歌われる興奮の中で時間はあっという間に過ぎてしまった。そこには誰もが大好きなサザンを徹底的に実現させるのだという桑田佳祐の全くぶれない姿勢があった。

桑田佳祐は何故サザンを復活させたのか。それは今の日本にサザンが必要だと思ったからだ。それが痛いほど伝わってきた。桑田個人の意志を超える何かに導かれての復活なのだ。そして性的な祝祭感をツアーのテーマにしたのも、今の日本の祭りに最も必要なものは何か、という桑田の切実な思いから導かれたものであることも強く伝わるライヴだった。

9月22日、宮城スタジアム
(2013年10月3日 日本経済新聞夕刊掲載)
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