追悼ガース・ハドソン——豊かな音色でザ・バンドのサウンドを決定づけた偉業を讃えて

追悼ガース・ハドソン——豊かな音色でザ・バンドのサウンドを決定づけた偉業を讃えて

ザ・バンド、最後のオリジナルメンバー、ガース・ハドソンが1月21日に亡くなった。87歳というから天寿と言っていいだろう。ガースと言えば、ライブでは穏やかな表情でグループの最後方でオルガン、シンセサイザー、アコーディオン、サックスなどを駆使しサウンドを色づけていた。決して派手であったり唸らせるプレイを連発する人ではなかったが、豊かな味つけとアクセントがザ・バンドの魅力の一端を担ってたのはファンの誰もが知っていた。

昆虫学者を父に厳格に育てられた彼はオルガンを弾くことをきっかけに音楽にのめり込みR&Bやロックンロールをプレイし、ロビー・ロバートソンらに求められグループに参加となるが、バンド活動が両親に反対されると困るというので、グループの音楽教師としてレッスン料を払ってもらうようにした、なんてエピソードが残されている。

ロビーも「あの頃のガースは間違いなくロックンロールの世界で一番進んだミュージシャンだった」と語り、映画『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』の中で「マディ・ウォーターズとバッハを同時に理解してる」とも絶賛してるし、「僕らとやるのと同じ感覚でジョン・コルトレーンやニューヨーク交響楽団とも共演できただろう。曲を聞きながら、その場でコードがとれたんだ」なんて発言もあるが、その能力が若いグループにとってどれほどの貢献となったかは、改めて強調するまでもないだろう。

グイグイと引っ張っていったり音で自己主張をするタイプではなかったが、逆にどこでどんな音を入れたらいいのか、どれを省いたらいいのかを知り尽くしていた人であり、ザ・バンドの数々の名曲には欠かせない人であった。そんな人だけにソロ作も少ないが、初の本格的ソロアルバム『ガースの世界』(2001年)のジャケットはガースが羽ばたく白い鳥の背中に乗った、まるで今回の訃報を描いたかのようなものであったが悲しむことはない。リチャード・マニュエル、リック・ダンコ、レヴォン・ヘルム、ロビー・ロバートソンと先に逝った兄弟たちがセッションの準備をして待ち構えているはずだ。(大鷹俊一)


ガース・ハドソンの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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