今夜もポール・マッカートニーを観る

今夜もポール・マッカートニーを観る

今回もネタばれになるので、行かれる方は終わってから読んで下さい。2回目のアンコールのラスト、つまりライブ全体のラストは、アビイ・ロード・メドレーだった。アルバム後半の「ゴールデン・スランバー」「キャリー・ザット・ウエイト」「ジ・エンド」の3曲が続けて、アルバムそのままの流れで演奏された。

言うまでもなく「アビイ・ロード」はビートルズの実質的なラスト ・アルバムである。そのアルバムのラスト・ナンバー「ハー・マジェスティ」前に歌われるこの3曲は、ビートルズからのラスト・メッセージといえる。そのメッセージは「キャリー・ザット・ウエイト、ア・ロング・タイム」、君はその重荷を背負っていくのだ、これから長くずっと、というものだった。これについては何度も書いているが、ビートルズのラスト・メッセージとして、これ以上のものはない、と言っていいくらい見事なものだ。ビートルズという夢の終わりに、僕たちは彼らから「キャリー・ザット・ウエイト」という言葉をもらった。それは1969年のことだった。

それから44年、僕たちはポールの夢のようなライブの最後に、また「キャリー・ザット・ウエイト」という言葉を受け取ることになる。
何故、ポールがこのアビイ・ロード・メドレーを今回のライブのラストに歌ったのか、その真意は分からない。
ただ単に、コンサートのラストとして座りがいいから、というだけの理由かもしれない。しかし僕は勝手に必然だと思っている。
評論家的なもっともらしい表現をするなら、曲が最後に歌うことを要求したのである。そんな曲をポールは44年前に作ってしまったのである。このポップ・ミュージックの夢の本質を余りに見事に表現してしまった曲を、ポールは作ってしまった責任において今回コンサートのラスト前に歌ったのだ。
今夜もラストはアビイ・ロード・メドレーだった。「キャリー・ザット・ウエイト」は歌われるべきところで歌われ、僕たちの心に大きな余韻を残した。

昨日、書いたように今回は自分に求められるものを、ポールは全面的に引き受け、それを演奏してみせた。結果、たくさんのビートルズ・ナンバーが歌われ、たくさんのヒット曲が演奏された。歌われるべき歌、求められる歌が、その正しい場所で鳴ったと思う。
前回のツアーではライブ途中で歌われた「キャリー・ザット・ウエイト」が、今回ラスト前で歌われたのは、やはり偶然ではないと思う。
今日も2時間40分はあっという間に過ぎていった。このまま夢の時間がいつまで続けばいいと、あの場にいたほとんどの人は思っただろう。
しかし夢の時間は終わる。

「僕は君に枕をあげない、招待状を送るだけ」「君はその重荷をずっと長く背負っていくんだよ」とポールは歌った。

今日は「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」を聞くことが出来た。
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