被曝の抑制に森林が果たした役割

被曝の抑制に森林が果たした役割

医療ガバナンス学会からのレポートに、福島第1原発事故時の放射性物質の飛散について独自の調査を行なったグループの報告が掲載されている。

このチームは、放射性ヨウ素とセシウムの動態を明らかにすることを目的に研究を開始し、南相馬市に本部を置く相馬地方森林組合の林地(新地町、相馬市及び南相馬市の3市町村)をフィールドに調査を続けてきた。原発から南相馬市そして相馬市の西部を通って福島市方面に向かって流れた大量の放射性物質は、400m以上の山があるとそこで滞留・停滞し、そして林地の外樹皮に付着したという結果を導き出している。

研究の結果、放射性ヨウ素は樹木の木質成分と結合しやすい性質があり、多くのヨウ素は樹木の気孔から取り込まれ、細胞壁に結合して固定されることも明らかとなった。一方で、放射性セシウムは葉面や樹皮から吸収され、内樹皮から木部(木材となる組織)に浸透していたことも明かされている。

つまり森林は、原発事故によって生じた放射性ヨウ素とセシウムを吸収し、ヒトを守る重大な役割を担ったことが明確になった。放射性ヨウ素135Iは半減期が短いために多くが消滅したが、放射性セシウム、特に137Csは半減期が30年と長いため、現在森林は放射性セシウムの生物的シンク(貯蔵地)になっているといえる。南相馬市林地の樹木が吸収したセシウムの量は、チェルノブイリ原発事故後の近郊のウクライナやロシアの樹木の吸収量に匹敵する計算になる。

写真は被曝についての取材を行なった『SIGHT』6月発売の52号。詳細はこちらのURLを。ネットでのお申し込みも出来ます。
http://ro69.jp/product/magazine/detail/69588
(小池清彦)
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