それこそ1mmでも位置が狂ったらお互いの喉をかっ切りそうなアクロバティックなアンサンブルとヴォーカリゼーションが、あたかも究極の剣術披露のようにバシバシと軌跡を重ね合わせながら、幽玄なるロックの風景を描き出していく……惰性やノリを極限まで廃したところから、極太のグルーヴを立ち上げるマーズ・ヴォルタの本質が、「ソニック」ステージどころかあたり一面漆黒の闇で塗り潰す勢いで炸裂している。最高。
そしてオマー。個人的には、この人のアルペジオは世界のどのギタリストのものよりも抗い難く思考と感情を揺らがせてくると思っているのだけど、この日のプレイもまさにその真骨頂。心をかき乱されながら、それでも異常に和んでしまっているのが自分でもわかる。マゾか俺。(高橋智樹)