そして第二部はアルバム『ペット・サウンズ』が全曲、曲順通りに演奏される。
そしてさらにアンコール6曲。
いろんな意味で、一瞬も耳が離せない2時間半だった。
まず、言うまでもなく曲が全部名曲。
しかも、飛び抜けてケタ違いに名曲。
「ファン、ファン、ファン」「素敵じゃないか」「サーファー・ガール」みたいな曲、天才が逆立ちしても書けるもんじゃない。
そんな曲ばかりがパコパコと連打されるのだ。
脳の神経細胞がハレーションを起こし始める。
そして第二部の『ペット・サウンズ』は、曲の良さに加えてあの驚異的なアレンジとアンサンブルとハーモニーである。
もうニコニコ笑いながら涙が止まらないような、感情が解き放たれるような感覚が、生でアルバム1枚分続けて味わえるのだ。
申し訳ないが、幸せだった。
先日観たボブ・ディランは、ディラン本人の現役バリバリの肉体性に圧倒された。
でも今回のブライアン・ウィルソンはむしろ真逆だった。
歌えないパートは他人に任せて、自分で歌うところもかなりセーブしながらだった。
歌に圧倒されるということはなかった。
でも、その衰えた歌声の背後に広がる楽曲の緻密さ、完成度、創造性。
その巨大さ。
それに圧倒された。
次号のロッキング・オンで、これまでになかった『ペット・サウンズ』徹底特集をやります。
注目しててください。