【コラム】大傑作!電気グルーヴ最新作『TROPICAL LOVE』。その理由は?

【コラム】大傑作!電気グルーヴ最新作『TROPICAL LOVE』。その理由は?
電気グルーヴの近年の中ではまちがいなく最高傑作。より踏み込んで言えば、『VITAMIN』 (93年)、『VOXXX』(00年)に続く、電気グルーヴの新たな金字塔と呼べるアルバムだ。
今の電気グルーヴの大きな完成形だ。

2000年代以降の活動休止を経て、結成25周年やフジロックでの記念碑的ライヴや映画『DENKI GROOVE THE MOVIE? 〜石野卓球とピエール瀧〜』 なども含めて再び勢いづいている電気グルーヴが、状況だけでなく音楽的にも完全にピークを迎えているということをこのアルバムは証明している。
2人は怒るかもしれないが、『VOXXX』の次にもしこのアルバムが誕生していたらこの国の音楽シーンは全く違う次元へと進化していただろう。それぐらいの革新性と到達度を示した作品だ。


このアルバムには電気グルーヴの全てがある。
テクノ、エレクトロ、ハウス、ニューウェーブ、エレポップ、ポスト・パンクまで、彼らのルーツが音の部品として遠慮なく使われている。だが、どの曲としてそれらのジャンルに納まっている曲はない。いやむしろ、それらの部品が全く違う組み合わせによって新鮮に鳴り、そのことを音自体が喜んでいるような、真っさらなオリジナル音楽になっている。
原点回帰と言われたり、ノスタルジックという言い方がされたりもしているようだが、僕はむしろ全く逆で、「全面解放」のアルバムだと思う。

16年前のアルバム『VOXXX』は自らの全てを曝け出した凄絶な作品だった。
あれが出て、その後の活動休止から復活して以降、電気グルーヴの作品は、ある種のストイシズムとソフィスティケーションが暗黙のルールになっていた。(意図したものか、そもそも自覚的なのか、それはわからないが)。
そしてそれを補完するためかどうなのか(これも僕にはわからないが)、ライブでのMCがどんどん長くなってそこで素を全てを曝け出すというスタイルが多くなった。そうすることで音楽の純度と自分たちのステージに立つモチベーションの両方を守ろうとしているように僕には見えた。
つまり、復活してからの電気グルーヴは音楽グループとしては良質な音楽を生み続けてきたが、アイデンティティーとして引き裂かれていた部分があったと思うのだ。

このアルバムには、そこを完全に乗り越えた電気グルーヴがいる。
誤解を恐れずに言えば、これが真の完全復活のアルバムなのだと思う。
底なしの現実感と天井知らずの多幸感。これが電気グルーヴだ。
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