ロッキング・オン最新12/7発売号、『2021年間ベスト・アルバム50』について

ロッキング・オン最新12/7発売号、『2021年間ベスト・アルバム50』について - rockin'on 2022年1月号 表紙rockin'on 2022年1月号 表紙

去年の『ベスト・アルバム50』の特集で、僕は2020年について「ポップ・ミュージックの楽園状態」だと書いた。去年に限らずではあるが、ここ2、3年のポップ・シーンはそこら中に傑作の果実が実りまくって収穫しきれないような、本当に楽園のような状態だった。デバイスとソフトの普及で音楽を作るのも流通させるのも限りなく簡単になって新たな才能が世に出やすくなったし、ジャンルも関係なくなったし、メジャー/マイナーも区別がなくなったし、音楽をやる上で年齢もジェンダーも国籍もなんにも関係なくなったし、アーティスト同士のコラボレーションや楽曲のやり取りもスムーズになったし、そりゃ最高の作品がどんどん生まれてくるのも当たり前といえば当たり前である。この2年間はコロナ禍の影響で音楽業界は苦しんだが、でも作品ということに関しては、むしろ制作期間が増えたり、テーマとの向き合い方が深まることでクオリティー・アップに繋がったのは間違いない。

さて今年、2021年はどうなのか。簡単に言ってしまうと、上記のような状況に乗って、さらにZ世代の価値観の影響もより大きくなって、もっと自由に、これまでになかった不定形の進化を遂げていて、面白い作品が飛躍的に増えている。特に面白いと感じるのは、音楽におけるオリジナル、模倣、サンプリング、コピー、再評価、クリシェ、レトロといった感覚をもはや自覚することすらなく、ごく普通に当たり前のようにあらゆる既存のジャンルやサウンドや、時にはメロディーさえ新たな創造物として生み出してしまう、そんな新世代のアティチュードが前面に出てきたことだ。彼らは80sサウンドもグランジもエモもポスト・パンクも何もかも、ただ単にストレートに「2021年の音楽」としてあまりにも自由に(いや、そこに「自由」という意識すらないだろう)生み出す。それが非常に面白くて、素晴らしい。マネスキンのハード・ロックも、ヤング・サグのギターのトラックも、リトル・シムズのブーン・バップのビートも、オリヴィア・ロドリゴやウィローのエモやグランジも、そこには意図や作為はなくて、ただ選び取った自由があるだけで、それが彼らの音楽にこれまでの世代にはなかった解放感を与えている。

そんな時代の変化も感じられた『2021年ベスト・アルバム50』、じっくりと楽しんでもらえればと思います。 (編集長 山崎洋一郎)


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