チャットモンチー『ふたりじゃない』を観て思った
2013.08.24 17:01
劇場公開もされた、チャットモンチーのツアードキュメンタリー『ふたりじゃない』のDVD/Blu-rayが来週リリースになる。
久美子の脱退が告げられるシーンが衝撃的だった前回のツアードキュメンタリー『鳴るほど』も、そして今回の『ふたりじゃない』も、単なる「ツアー」ドキュメンタリーを超えている。
チャットモンチーというバンドの凄み、不思議さ、奇跡と思える瞬間、運命的とも言える何か、
そのすべてをとらえたドキュメンタリーになっている。
『ふたりじゃない』というタイトルも、絵莉子の妊娠発覚前にすでに付けていたらしい。
うまく言えないけど、一つ一つの小さな、あるいは大きな出来事をすべて「チャットモンチー」というものにしていく力、
そういう、このバンドが持つ特別なフォースのようなものが、彼女たちのドキュメンタリーにはどのシーンにも収められている。
そして今回は、絵莉子と晃子の2人になったことでまったく新しいバンドとして生まれ変わった「変身」からドキュメントは始まる。
3人バンドの1人という意識の殻を破って、秘めていた底知れぬエネルギーをいきなり放ち始めた絵莉子、
そして、「遅れてきたチャットモンチー」の役割を断ち切って大胆なアイデアとプロデュース能力を遺憾なく発揮しながら絵莉子の背中を押す晃子。
変身というキーワードでツアーは始まったが、生まれ変わったと言う方がふさわしい。
それほど、彼女たちの中で何かが大きく変わったのがステージからもフッテージ映像からもインタビューでの言葉からも伝わる。
僕はチャットモンチーが好きである。
このバンドに対して最も冷静で正確な評価を言い表そうとすると、好きという言葉が出てくる。それ以外はなんだかしっくりこない。それほどまでに、このバンドは純度が高い。僕の中ではそういうバンドは他にいない。
メンバーはもちろん、ファンもスタッフも含めてチャットモンチーをバンドというよりも生き物のように大切にしたくなるのは、だからだと思う。
でもこの生き物はかわいいだけではない。
変身するし、吠えるし、倒れても立ち上がる。
そして今回のドキュメンタリーで絵莉子が何度も「ついて来てください」と言うように、恐るべき速さで走り続けるのだ。
絵莉子が無事に赤ちゃんを出産して再びチャットモンチーの活動が始まるのを僕らは待っているけど、その間も実はチャットモンチーという生き物にはすでに何かが始まっているのかもしれない。このドキュメントを観ていると、そんな気さえする。